曲者と天女 ページ11
カポーンと銭湯のBGMのような音が鳴った。私だって、お風呂に入る。ただし、一人でね。だって、一緒に入るような同じ年代の友達がいない。友達という単語が、久しぶりに頭の中に出てきた時、平成の時代を思い出す。
いつも、私を気遣ってくれた彼女。
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『 ……その火傷、皮膚移植で治せるよ。ねぇ、手術しようよ。お金を貯めて、何年でもいいから治そう? 』
『 いや、そんなの絶対にやだ。』
『 その火傷、本当に残すつもりなの? 』
何度も何度も、後悔しないのかと言うように問いかけられた。美術大学で、個性的な人が多い中で出来た初めての友達。
お風呂から上がって、鏡を見る。半身を覆う火傷は、見たら全員目を逸らして距離を置くか、同情の目で見つめるかのどちらか。男性なんて、相手にしないだろう。朧月の夜空の下、部屋の前の縁側で落ち着く。
『 その火傷を見るたびに、後悔するんだよ!? 』
友達の悲痛な叫びは、まだ根深く鼓膜にこびりついてる気がする。その答えに、あの時の私は上手く返せなかった。すると、私の前に人のような長い影ができる。
「 へぇ、きみが新しい天女様かい? 伊作くんの言う通り、確かに前の天女たちとは違うな。」
朧月をバックに、顔に包帯を巻いた背の高い男の人が立って、私を見下ろしていた。
「 ひっ!? くっ、曲者? 」
「 曲者じゃあない。タソガレドキ城の雑渡混奈門だ。保険委員会にお世話になってから、たまにこうして遊びに来る。」
飄々とした態度で、ゆっくりと近づいて、気づいた時には顎の下を持ち上げられた。痛い痛い、伊作くんのほっぺを引っ張られたのと同じくらい痛い。
「 ふーん、なるほどね。君みたいな人は、たまに見るよ。」
「 あっ、あの? 何をおっしゃってるか全く分かりません。」
「 忍たま達もまだ経験が浅いな。……大切な人が先に死なれ、残された人の顔も見たことがないか? 」
その言葉に、背中に冷や汗が走った。顎がゆっくりと外れ、唯一見える目が静かに光る。
「 ……今の表情で分かった。きみは忍術学園に迷惑も危害を加える気持ちないことが。」
「 その顔を見ると、どれだけ愛していたのか容易に想像できる。」
そう言いながら、ゆっくりと私の頭を撫でた。懐かしい感覚に、ジワリと涙が出そうになった。
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チョコパイ - 続き気になる、更新待ってます! (2021年4月28日 4時) (レス) id: 451b0d7f40 (このIDを非表示/違反報告)
あみん(プロフ) - とても面白いです!!読みやすいし!!!応援しています!! (2021年1月5日 12時) (レス) id: ace2dffc29 (このIDを非表示/違反報告)
NARUTOKUN(プロフ) - ふうちゃんさん» いいえっ、いくらでも感想下さい笑笑。私の元気の源はですよー!! (2018年12月25日 23時) (レス) id: 371427a5bb (このIDを非表示/違反報告)
ふうちゃん - なんかコメント多くてすみません!伊作くんとのハッピーエンド楽しみにしてます、これからも頑張ってください! (2018年12月20日 20時) (レス) id: bc1f7a9f27 (このIDを非表示/違反報告)
チキンカツ - ふうちゃんさん» コメント、何回もして下さってありがとうございますっ。精一杯最後まで書ききって伊作と幸せ者にしてあげたいです!! (2018年12月2日 0時) (レス) id: 4c755f6345 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チキンカツ x他1人 | 作成日時:2018年11月3日 23時