1話 ページ1
side K
今日は朝から、なにもかも最悪だった。何がって全部だよクソッタレ。
目覚ましは寝てる間にブッ飛ばしてたから遅刻したし水溜まりで滑って顔面は強打したし、自分のクラスにやっとの思いで入ったと思ったら入学式だった為一年の教室だし、鼻血に乱れた服のハイエナなんてヤンキーしか居ないので一年からの偏見もサービスで付いてきた。返品不可。
んで今日も今日とて教室では煙たがられてる。
普段は温厚な自分もイライラしてた訳で。
でもそんなことさえ些末事と思える位には今の状況は最低最悪である。
「さっさと金出せよ草食動物!」
昼休みに校内のカツアゲにばったり。
しかも相手は多分入学ほやほや一年。校内でやる辺り頭に蛆虫が湧いている。
因みに裏庭はお気に入りの猫ちゃんスポットなので、早く行きたい。
小野寺慧はイライラさえしてなければ、普段は優しく、義理人情に厚いちょっとヘタレな男の子である。イラついてなければ。
さて問題、イラついてる小野寺慧が昼食で、自分の好物が入ってる幻の焼きそばパンが目の前で売り切れた。
今日の自分は何もやってないのに。もしかしたら昨日とか一昨日とか、明日ならなんかやったかもしれないけど、今日は何もやってない。
そんなことが続いたら、どんな小野寺慧が出来るだろうか。
「お前ら何やってる訳」
「…!小野寺慧…!お前に関係無いだろ!」
正解は、ちょっとばかし思考が物騒になる。
兎の獣人の一年生を他所目に、無意識にグルル…と喉が鳴った。
「速く退けよ。俺さ、今イラついてんの」
瞳孔がギュッ、と締まった感覚がする。
目の前の相手は汗びっしょり。ハハ。おもしろ
「此処俺の場所なの。わかったらさっさとどっかで野垂れ死ね」
じゃねぇと噛み殺すぞ。なんてことも考えながら相手は逃げ去っていった。逃げ足が速いと便利だよな。わかるよ。
てか可愛いものは保護しろよ。猫とか兎とか。可愛くないもの?ドブに捨てとけ。
くる、と足を使って背中を見る。
「んで、そこの一年。何やってんのお前…。まぁ良いや。早くどっか行って。さっきも聞いたと思うけど此処俺の場所なの」
しっし、と相変わらず他所目で手を払う振りをして、猫を探しに行く。
あっれおかしいな居ない…結婚したのかな。俺以外の奴と。
それにしても一年がずっと立ったままだ。
腹でも痛いのか、と少し心配になったから、今度はちゃんと目を見た。
(…あ)
あ。その一言が口から出たのかは知らんが。そう感じた。
(…綺麗だ)
降る桜と、その白の髪が、とても綺麗に感じた。
小野寺慧、齢17。
多分、春が来た。
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