嵐の前の�� ページ32
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「またやっとる」
「なにがー？」
試合前のキャッチャー練習を終え、呟いたともの視線の先には、青田さんの言葉に耳を傾けるAちゃん。
「…なんかやってた？」
「頭振ってるやつでしょ？」
「そう。気付いとった？」
健矢が指摘したそれ。
「…確かに見るかも」
「前までしてたっけ？」
「あんま気にならんかった。まだ調子悪いんかな」
「最近Aのこと結構心配してるよね」
「そらあんなことあったらな。」
「だよね…」
"あんなこと"とは、もちろんZOZOのこと。
あの後、見事に体調を崩したAちゃん。連絡が取れなくなって、結構みんな心配した。
応援してくれるファンが増えることで、こんなトラブルが起きるとは思わなかった。
「お前なんか聞いとらんの？」
「んー、聞いてないなー。」
「聞いても答えないだろうしね。俺らにできることやるしかないよ。」
ドライにも聞こえる健矢の発言。でも、ともに負けないくらい心配してるのを俺は知ってる。
．
「Aちゃーん」
「はーい」
「…ってさ、」
「あ、ごめんなさい、もう一回いいですか？」
「ちゃんと聞いてよ」
「すみません、あは」
．
「お疲れ様でしたー」
まだ無理するな、と言われて試合前に京セラを後にすることになった。
試合は見ていこうかと思ったが、冷蔵庫が空なのを思い出して帰ることにした。
「お腹すいた…」
そもそも今日まだまともに食べてないんだった…食べて帰るのもありだなーなんて思考を巡らせる。
結局、食べたいものが思いつかず、お弁当を買って帰ることに。お弁当屋さんでもずいぶん悩んでしまった。
お腹空きすぎると何もかもが美味しそうに見える現象、なんていうんだろう。
「やばっ、ポスト見てない」
しばらく見てないポスト。大変なことになってそう…督促状とかあったらどうしよう。
少し怯えながら、ポストの中身を鷲掴んで部屋に上がる。
お弁当を温め直している間に、郵便物を吟味。
「うわー、美味しそうー」
単身世帯には不向きな豪華なメニューをみて、さらにお腹を空かせる。
-ピーッピーッ
-ピーッピーッ
レンジが何度目かの温めが終わったことを知らせてくれても尚、動くことができなかった。
「…どうしよう…」
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作者名：はぬ | 作成日時：2023年11月12日 19時
