不本意です (ページ22)

今日:674 hit、昨日:1,929 hit、合計:134,061 hit

受難② ページ22

．

「カート先持っていっちゃいますね」

「さんきゅー」

「ぶわっ」

相変わらず風が強いZOZOマリン。外野に向かおうとした瞬間、突風が吹いて変な声が出た。

夏なのにこの風のおかげで、もはや寒いまである。

定位置に到着してワゴンの荷物を出そうと思ったが、この風じゃ飛ばされるものばかり。
シャフトくらいしか置けないことに気づき、しばしフリーズ。

ちらりとベンチを見やるも、まだ誰も来る気配がない。

せめてワゴンの中身が飛んで行かないようにと、シートとロープをかけてタイヤにロックをかける。

一旦ベンチに戻るために、来た道を戻っていると

「Aちゃんー！」

スタンドからロッテのユニフォームを来た女の子たちに手を振られた。

会釈をしながら足早に立ち去る。

ロッテファンの方たちにも認知していただいてることに驚きながらも、やはりこういう対応は向いてないと苦笑い。

それにしてもすごい大きいカメラ持ってたなぁ、あれ高いのかなぁ。あの子たちも持ってるなぁ…

なんてぼんやりしていたら

バシャッ

「？！」

突然、頭上から水が降ってきた。

スコール？雨予報だったっけ？と思ったりもしたが

「…ビールだ」

水ではなく臭いがすることに気づき、降ってきたであろう方向を確認すれば、凍てつくような眼差しでこちらを見る女の子がいた。

「なにしてんねん！おまえ！」

一連の流れを見ていたのだろうか、周りの人達が彼女を止める声が聞こえた。

「Aちゃん！戻るよ！！」

いつの間にかそばに来ていた亮ちゃんに手を引かれて、自分の身に何が起きたのかよく分からないまま下がった。

「着替えある？」

「ああ、うん、あるよ。ありがとう。」

「ねえっ」

「え、びしょ濡れやん、、雨降ってるん？」

「Aちゃんっ」

「亮ちゃんごめん着替えてくるね。泰ちゃんそろそろアップ始まるよ！」

何か言いたげな亮ちゃんを残して逃げた。