受難�� ページ21
．
「はぁ…あ、いけないいけない」
「なにしてるん？」
「えーと…深呼吸？」
不意に出てしまった溜息を吸い込んでいたら、ももに見られてしまった。
「悩み事？」
「ん？」
「聞いてるんやけど。なんや難しい顔してたで」
呆れたように笑われた。いつから見られていたんだろう。
「ほんと？ぼーっとしてた。」
努めて自然に、そして見られないようにそれを片付ける。
「働きすぎちゃうん？さっきラオウさんたちも心配してたで。」
「わたしワーカーホリックかなんかだと思われてるのかな。ちゃんと休んでるんだけどねぇ。」
「…なんかあったら、話聞くで。頼りないかもしれんけど。」
「打てるキャッチャーほど頼もしい選手はいないよ？」
「そういうことちゃうんやけど…顔色悪いで」
「やっぱり？」
「自覚あったん？」
「いつもと違う道通ってきたらさ。とんこつラーメンのお店があって。換気扇からものすごい臭い出てて、胸悪くなっちゃったんだよね。」
「何時間前の話してんねん。ていうか臭いで胸悪くなるって親父か？」
「歳には抗えないってことか…」
「やめろや。同い年や俺も。」
「あははっ。今日も怪我なくね。」
納得してくれたかは分からないけど、諦めてはくれたみたい。
顔色悪い、かぁ。きっと月のものが近づいてるんだろう。だから心がざわざわしているんだ、そう言い聞かせた。
.
「きゃあ〜！」
…コンサート会場じゃないよね？ここ。
オリ姫デーのビジュアルが公開されて以降、アイドルコンサートと見紛うほどの女性ファンを見かけるようになった。
そして"オリメン"には黄色い歓声があがるように。
野球の試合、なんだけどな。
応援していただけることは、本当にありがたいこと。選手たちのモチベーションにも繋がるし。
だけど今のこの状況を素直に喜べない自分がいた。
「参ったなぁ…」
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作者名：はぬ | 作成日時：2023年11月12日 19時
