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いざ、決勝戦へ ページ13



いよいよ決勝戦。対戦相手はアメリカ。


「え、緊張してるんですか」


「まだしてないよ」


日本の先発は今永さん。思ったより緊張しているらしい。
周東くんや広報さんに揶揄われながら、軽やかな足取りで廊下を進む姿を見やる。


「なんか言いたそうだね」


「特に何もないですよ」


「そう?別に緊張してないから、おれ。」


「緊張してる人が言うやつ…」


「それに緊張はさ、必要だから。パワー発揮には。」


「めっちゃ喋るじゃないですか。」



このメンバーで戦うのも今日が最後か…
ロッカーに書かれた名前を見渡して今日までのことを思う。


「怪我なく、笑顔で終えれますように。」





「アイシングする人…いますかね」


「試合結果次第かな」


「ですよねぇ」


一点リードのまま迎えた9回。ブルペンから出てきたのは翔平くんだった。泥だらけのユニフォーム。こんな展開、誰が予想しただろうか。

むーさんとは初バッテリー。みんなの心配をよそにマウンドで言葉を交わす2人。


先頭打者にはフォアボールを与えたものの、セカンドゴロに打ち取り、お手本のような4-6-3が展開された。


ツーアウトで迎えたのはアメリカの主将マイク・トラウト。



「漫画みてぇ…」



ベンチで見守る選手からそんな声が聞こえた。

9回裏ツーアウト、フルカウント。

トラウトのバットが空を切り、翔平くんのスライダーがむーさんのグラブに収まった。


それと同時に日本が歓喜に包まれた。


みんながグラウンドに駆け出す姿があまりにもきれいで、言葉が出なかった。


「勝ったんだ…」


「Aちゃん、いかないの?」


さっきまで輪の中にいたはずの一平さんが息を切らしながら戻ってきた。


「ここで、見てたくて…みんなの姿を」


「どこまでも裏方さんだね」


「夢じゃないんですよね、これ」


「うん、夢じゃない。すごいよね」


「すごい、、すごすぎる、、」


宮崎ではとにかく端っこにいた宇田くんが輪の真ん中にいて、苦しんでいたむねくんが顔をくしゃくしゃにして喜んでいて。


「Aちゃんもお疲れ様」


渡されたタオルに顔を埋めるしかなかった。


「A泣くなよー、本当にありがとう」


「栗山さん!こちらこそありがとうございました。」



「一平さん、このタオル誰のですか?」


「そこにあったやつ」


「嘘でしょ?!」


「Tシャツもらったか?!」


「まだです!」


「サイズないんちゃうか?」


「吉井さんのいじわる」

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作者名:はぬ | 作成日時:2023年11月12日 19時

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