村神様、おはよう ページ11
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日本にとって鬼門の準決勝。
先発は令和の怪物・佐々木朗希。
試合が動いたのは4回だった。
順調に2アウトを奪ったものの2者連続でヒットを許し、続くバッターにホームランを浴び、まさかの3失点。
普段は冷静な佐々木も、ベンチ裏で感情を露わにした。
5回、6回と満塁のチャンスを作るものの得点に繋げることは出来ず、ベンチにも嫌な空気が立ち込みはじめた。
残された攻撃はあと2回。
迎えた7回。近藤・大谷が出塁し繋いだチャンス。打席に立ったのは4番・吉田正尚。
プレッシャーをもろともせず、一振りで試合を振り出しに戻した。
しかし喜びも束の間。直後の8回、日本球界のエース・山本がタイムリー2ベースを打たれ勝ち越しを許し
続く湯浅もタイムリーを浴び3対5と再び追いかける展開に。
8回には代打・山川穂高の犠牲フライで1点を返したものの、まだベンチは静まり返っていた。
1点ビハインドで迎えた9回。日本にとって最後の攻撃。先頭打者は大谷翔平。
バットをやや短く持って打席に入り、捉えた初球は外野へ。ヘルメットを脱ぎ捨てた大谷は一気に二塁へ。
ベンチに向かって大きく吠えた大谷は、再び勝機を呼び寄せた。
続く吉田正尚はフォアボールを選び、ネクストを指差した。お前が決めろ。
その先にいたのは日本が誇る三冠王・村上宗隆。
ここまで苦しんできた村上。最年少三冠王として挑んだ今大会。
後に栗山監督は、村上に日本を背負わせると決めていたと語る。
これまでの成績を考えれば代打や送りバントも有り得た場面。だが栗山監督は村上を打席に送った。サインはヒッティング。
栗山監督は、侍たちは。そして日本は、この男を信じていた。
3球目、打球はフェンスに直撃。大谷と代走で塁に出ていた周東が一気に生還。野球史に残る劇的なサヨナラ勝利をおさめた。
試合後、感情を爆発させた村上。チームメイトや監督と言葉を交わしながらベンチに引き上げていた際、スタッフと交わした会話が話題を呼んだ。
「Aさん!Aさん!」
「おはよう!ナイスバッティング!」
苦しんできた三冠王が目覚めた瞬間だった。
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作者名:はぬ | 作成日時:2023年11月12日 19時