尋ね人 ページ1
．
「A、監督が呼んでる」
「監督が？」
練習に出てきている選手が少ないある日、事務仕事に励んでいたら呼び出しがかかった。監督に呼ばれるような事件を起こした覚えはないぞ、と記憶を辿りながら監督室へ向かう。
「…あれ？」
意を決して監督室の扉を叩くものの、返答はなし。
新手の嫌がらせか？と思っていれば会議室から声が聞こえ、そっちかーいと突っ込みを入れながら、扉を叩けば案の定。
厚澤さん場所も教えてよね…
「失礼します…え？あ、お久しぶりです」
「久しぶりだね」
監督だけだと思っていた部屋には、まさかの先客がいて驚いてしまった。
「…えーと…」
「とりあえず座って。」
「失礼します…」
「ということで。よろしくね？」
「なにをですか？」
「はは、中嶋さんも雑だなぁ」
「栗山監督から、オファーがありました。侍ジャパンに帯同してほしいと」
「わたしがですか？」
「うん。オリックスからは投手を3人預かる予定なんだけど、やっぱり投手ってすごく繊細だから。少しでも普段と近しい環境を作りたくて。」
「選ばれた3人、それからチームの総意でAに行ってもらおうって話になりました。」
「ちなみにその3人っていうのは…」
「山本由伸、宮城大弥、宇田川優希」
「うだくん？！え！すごいすごい！」
「お願いできるかな？」
「任せたぞ、A」
「征さんのほうが適任なのでは…」
「その征さんも推薦してる。」
「なんで…」
「可愛い子には旅をさせよってね。」
「お断りなんてできるわけ…ないですよね。はい。すみません。私なんかがお力添えできるかわからないですが、よろしくお願いします。」
「ありがとう。短い間だけど、よろしくね。」
．
「変わってないようで安心したよ。」
「変わらないですよ、あいつは。」
「そうだよね…手たたいて喜んでたもんね。笑っちゃったよ。」
「舞洲にいることが多いので、育成組には特に。」
ｺﾝｺﾝ
「はい」
「あの、他にもコーチの方とかって…」
「厚澤さんいくよ」
「1人じゃなくてよかったー！ありがとうございます！失礼します！」
「元気印だね」
「元気すぎてガス欠が心配になりますよ…」
「心配事が尽きないね。4人。お預かりします。」
「お願いします。」
「厚澤さん！監督室じゃなくて会議室なら教えてくださいよ！」
「…言わなかったっけ？会議室って」
「聞いてません」
「ごめんごめん」
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作者名：はぬ | 作成日時：2023年11月12日 19時
