１７ ページ18
……どうも、この雰囲気は好きになれない。まあ、警察署の雰囲気が大好きなんて人が居たら、その人は余程の変わり者なのかもしれないけれど。
そんなことを考えながら、灰色の陰気な建物を見上げる。
あの事件の犯人に面会許可を取る。それ自体は思ったより簡単にできた。
本来ならば、事件関係者じゃなければ面会はできないはずだが、被害者であるAさんの知人……といって、身分証明をしたら許可は取れた。
うん、毎日会っているんだから知人だし、友だちといっても間違いはないはずだ。……自信、ないけど。
「こちらです」
「あ、ありがとうございます……！」
通されたのは、ドラマなどでよく見る、対面口がガラス板で区切られた部屋。
堅苦しい雰囲気に緊張しながらも、案内された部屋の椅子に座る。ドラマなどと同じならば、このあと犯人が僕のガラス越しに座るのだろう。
……今まで、犯人については考えないようにしてきた。
犯人に下された判決は無期懲役。でも、判決は下されたが、人を一人殺したのには変わりない。まあ、生理的な忌避というやつだ。
ガラス越しに足音が聞こえる。
少しばかり身構えてしまうのは仕方がないことだと割り切って、目の前に現れた人物に集中した。
「……あ、どう、も」
思わず、素っ頓狂な声を出してしまう。予想と違いすぎた。
まあ凶悪犯……的な厳つい強面の男の人を想像していたのだが、出てきたのはどこにでも居そうな、平凡で少し気の弱そうな男の人。
そこらですれ違っても印象に残らないランキング上位にランクインするだろう。
「こんにちは」
「……あ、はい」
丁寧に礼をされて、戸惑ってしまう。いや、普通のことなんだろうけどね？ 身構えていたからさ？
「お話ということでしたが……なんでしょうか？」
目を細めて優しく微笑む男の人。人一人殺したという凶悪犯にはとても見えない。想像と現実のギャップに戸惑ってしまうけれど、今はAさんについて話すのが先だ。
「あの……、あのときの、事件って、仕組まれてたり、とかしました？」
訊きにくいことなので途切れ途切れの言葉だが、意図は伝わったはずだ。
けれど、男の人は不思議そうな顔をした。
「え？ 仕組まれたりなんてしてませんよ？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 167人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちょこ - とてもよかったです！その後話が欲しい！ (2022年12月8日 19時) (
レス) @page23 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - おパンツドラゴンさん» ありがとうございます！ 小説家を目指しているのでそう言っていただけるのはとても嬉しいです！ 応援ありがとうございました！ (2020年7月6日 18時) (レス) id: a6aff5c4e4 (このIDを非表示/違反報告)
おパンツドラゴン - 千々さん» もう小説家になってもいいぐらいお話作るの上手ですよ!今回もとても良かったです! (2020年7月5日 20時) (レス) id: 981305fe40 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - haru☆さん» 感動ものになってたかめちゃ不安だったけど、そう言ってもらえて嬉しい！ 曲は組み込みたくなっちゃうんだよねぇ〜これもリスナーの性() (2020年7月5日 11時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 杠葉＃さん» 完結ようやくしたよ〜！ なんか尺が毎回延びまくって完結できるか不安になるの(笑) 素敵なのは透椛ちゃんかな！！！ (2020年7月5日 11時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：千々 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tidierika2/
作成日時：2020年6月16日 17時
