03 ページ3
まふまふside
僕が過労で倒れたのは二日前のことだった。
実際、働きすぎている自覚はあったのだが、リスナーさんが見てくれる、待っていてくれる、そう思うと自然と仕事に拍車がかかる。
その結果が、都立の大きな病院に入院することに。
「そらるさん、久しぶりに本気で怒っていたなぁ…」
体調管理をしっかりしろ、と怒られたのは昨日のことだ。
昨日には意識が戻っていたのだが、倒れた時に頭を打ったとかで、念のため入院している。
といっても、今はほぼ全快していて心配するほどのものでもないのだが。
今朝は体によさそうな病人食を食べた後、特に目的もなく、病院内をぶらぶらと歩いていた。
暇だったのもあるが、病院独特の光景に興味を惹かれたのだ。
廊下にはたくさんの人がいる。
足を怪我しているのか、車椅子で動いている人もいれば、僕と同じように元気そうに見える人だっている。
そんな、光景に気を取られていたから、彼女にぶつかってしまったのだろう。
「あっ」
高めの声に、大人びた雰囲気。
けれど、身長は低く、触れれば折れてしまいそうな儚さを感じさせた。
「大丈夫ですか!? あまり前を見ていなかったもので…すみません」
「いえ、こっちこそ…」
不自然に言葉が切れる。
なにか、おかしなことをしてしまっただろうか。
「まふまふ、さん…?」
その口から出てきた僕の活動名にはっとする。
彼女は十中八九、僕のリスナーさんだろう。
僕を知ってくれている人がここにもいる、そう思うと自然と心が温かくなった。
「沢島さーん、沢島さんはいらっしゃいますか?」
看護師さんが誰かの名前を呼んで、廊下を歩いてくる。
それに気が付いた彼女は、僕に一声かけると、背中に隠れた。
この反応からすると、あの人は彼女についている看護師さんなのだろう。
なぜ看護師さんから隠れているのだろう。そうしなければならない理由があるのだろうか。
看護師さんがいなくなった後、彼女は身を隠すのをやめ、頭を下げた。
「すみません…」
「いえ、大丈夫ですよ。…でも、いいんですか? さっき、看護師さんが探していたの…あなた、ですよね?」
「あ、はい…」
彼女は辺りを気にするように見回す。
見つかることを恐れているのだろうか。
いけないことなのかもしれないが、彼女が身を隠すには一度僕の部屋に来てもらうしかないだろう。
145人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
千々(プロフ) - ちょこさん» ありがとうございます! (2022年12月5日 9時) (レス) id: 1d9d509371 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - とてもよかったです! (2022年11月4日 20時) (レス) @page22 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 藍猫さん» おお!おめでとうございます!!(一年ほったらかしにしてて本当にごめんなさい……) (2022年9月4日 11時) (レス) id: 84f8a35d43 (このIDを非表示/違反報告)
藍猫 - スウッッーーーーー…そういえば10月18日って私の次の日じゃないですか…えまって嬉しい( 〃▽〃) (2021年7月17日 2時) (レス) id: 0f30a0c194 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 翡翠琥珀さん» 飢えているから書けたんですw そう言っていただけるなんて嬉しいです……! 自信につながります1 (2020年6月18日 21時) (レス) id: a6aff5c4e4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:千々 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tidierika2/
作成日時:2020年4月30日 15時