エピローグ5 ページ48
「A、この先悩んでるだろ？試験に合格したらって約束もどうすればいいか教えて欲しいって…そんなの約束しなくたって話してやるのに」
『だって、本当にどうすればいいか分からないし、ヒロトは…もう吉良財閥を成長させる大事な仕事がある。忙しいんだよ。今日だって頑張って休みとってくれて…それなのに相談なんて、ヒロトの時間がなくなっちゃう…』
「あのなぁ、俺は仕事よりAを優先するって言っただろ？」
ヒロトが仕事を始める時に、Aを優先するということをAにも、社員にも言っていた。
「休暇なんていつでも取れる。法律で40時間以上労働禁止ってあっただろ？吉良財閥はそれを守ってるし、残業もない。休暇だって好きな時に取れるようになってんだ。
俺はいつでもAを優先できる。相談だっていつでもな」
『ヒロトは優しいよね…。こんな私に、五年前からずっと尽くしてくれて…。本当に嬉しい』
「なんだよ…」
急にお礼を言われ、照れるヒロト。
『私、大好きだよ。ヒロトがいつでも私のためになってくれて、傍にいてくれて』
顔を真っ赤にしているヒロトはどうにかこの恥ずかしさを紛らわすため、桜のケーキを食べる。
「…ほんとかわいい」
ボソッと呟き、二口目を食べる。そしてAに口付けをした。
店の中とは分かっている。ヒロトがお金を払って貸し切りにし、店員もいない状態にしたけれども。
いつもより長いその口付けには、ヒロトの愛がある。
唇を離し、Aを見つめる。
「試験が終わった日、待つって言ったよな？」
まだ頬が赤いAは無言でこくりと頷く。
「Aの待つってこの日と、俺が仕事に戻ることだろ？Aは優しいやつだからな」
『…うん』
「けど、俺は違うんだ。話ってのはもう一つある」
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