エピローグ1 ページ44
ーその日は春なのに雪が降っていた。
だいぶ暖かくなってきたという頃の突然の雪で、しかも大雪。
辺り一面真っ白になっていた。その中に少しだけ見える足跡。
『寒い…！今日は大事な試験があるのに…あと20分しかない…！』
とても春とは思えない寒さ。Aは遅刻覚悟で防寒具をあるだけ着用していた。
『滑らない靴履いてるし…大丈夫かな？』
このまま歩いていては間に合わない、そう思い雪の上を走り出すA。
だが、滑り止めは走るのに対応するほど強くはなかった。
スケートを初めて体験し、転ぶ人のように滑り、倒れるA。
『うぅ…痛い…やっぱ無理か…』
｢何やってんだよ｣
頭上から聞こえたのはヒロトの声。
『ヒロト！？今日ヒロトは！』
｢あんなのやってられるか。それよりAを連れてく方が大事だろ｣
『だ、大事じゃないよ！ヒロトは今日会議があるんだから、会議の方が大事だよ…』
｢俺がいなかったら間に合ってねえけどな｣
ヒロトはそう言い、Aを車に乗せる。
『昨日免許取ったんでしょ？雪なのに大丈夫…？
じ、事故だけは起こさないでね！？』
そう。2人は今は中学生ではない。19歳になり、ヒロトは吉良財閥関係、Aは大学生。
｢事故なんて起こすわけねえよ。筆記も実技も完璧だったしな｣
『なら大丈夫か…でも雪は滑るからなぁ…』
｢Aじゃない限り大丈夫だろ｣
『そうだけど〜…』
｢着いたぞ｣
『ありがとう！
試験に合格したら…本当にいいの？』
｢当たり前だ。それにAが落ちるわけねえし｣
『絶対だよ！
じゃあ、行ってきます…！』
『終わった…！』
Aが試験会場に着いたのは時間厳守と言われた時間の30秒前。これより遅れていたら試験を受けることすらできなかった。
『帰ったらヒロトにお礼言わないと…』
試験会場を出ると、雪はまだ積もっている。朝よりは減っているものの、雪だるまが作れるほどの雪は全然残っている。
『…寒い！』
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