サッカーの力 ページ41
『追いついた！』
これで残るは逆転、守り。試合時間はそう残されていないため、ここからが見せ所。
その時、シャドウ・オブ・オリオンのユリカがテレビに聞こえるほどの声で、心情を口に出していた。
勝つことが全て、負けたら終わり。世界にいる意味がなくなる。
その言葉にはユリカの境遇や存在意義が現れていた。彼女はオリオンに育てられた、だから従うしかない、勝つしかない。
それでも、ユリカに同情せず、アツイ気持ちを伝える者がいた。明日人だ。
｢勝っても負けても、君はそこにいる！俺の胸をくっーと熱くさせてくれる君は、そこにいるんだ！｣
この明日人の思いはきっとユリカに届く、そう信じるしかなかった。
チョウキンウンズは最後のシュートを放つ。
フロイのイノセント・ドライブ。一星の新技、プラネットブレイク。野坂の月光丸・燕返し。灰崎のシャーク・ザ・ディープ。
そして最後に、明日人のサンライズブリッツ。
5人の選手によるシュートチェインが、シャドウ・オブ・オリオンのゴールに向かう。
ブラックシールドが破れ、ユリカは止めに入る。明日人はシュートを押し込む。
二人のぶつかり合いはやがて終わりー
ボールはゴールネットに当たった。
そして笛の音。
チョウキンウンズは勝った。世界は、救われた。
『勝った…？勝ったんだ…勝ったんだ！』
喜びで涙が止まらないA。これは決勝戦ではない、それは分かっているのになぜか溢れる。
その時だった。スタジアムの天井が崩れ落ちてきた。
どうしようもない、そう思ったが、それを救ったのはサッカーだった。
円堂たち、オリオンの選手たち、たくさんの選手と協力し、天井に向かってボールを蹴りあげ、危害を阻止したのだ。
一度は敵となった選手たちと、協力した。オリオンとも。これがサッカーの力だった。サッカーは人を笑顔にし、繋ぐ。
それを実感した瞬間だった。
『ありがとう』
Aのその言葉は誰に向けられたのか。
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