二人の“キズナ”【吉良ヒロト】 (ページ26)

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試合に向けてページ26

Aがあまりにも泣くため、ヒロトは意地でも泣き止ませたかった。

泣かれたって困るんだよ！と怒るとやっと泣き止む。

「ったく、小学生か」

『ごめんなさい…』

ヒロトは怒っているが、内心そこまでではない。泣かれるとどうすればいいか分からないというのがほとんどの理由だからだ。

「俺が色々教えてやる。これも特訓みたいなもんだ」

『ありがとう』

つい数十秒前まで泣いていたとは思えないほどの笑顔。こんなに表情が変わるものなのかとヒロトは戸惑ったが、それでもいつもと変わらない二人だった。

そしてイタリア戦の当日を迎えたイナズマジャパン。

円堂の士気を高める声に明日人も付け足し、フィールドへと向かった。

(準決勝、勝って優勝に近づかないと…サッカーも救うんだ、私たちで)

「A、緊張してる？」

後ろから声が聞こえた。今試合ゴールキーパーののりかだ。

『確かにしてるかもです。イタリアは監督の言っていた女王さ…魔女を護る選手たち。何をされるのか…勝てるのかも、やっぱり不安です』

監督は女王のことを魔女と言ったのをAは聞いていた。今までしてきた行為は全て魔女によって産み出されたものだから。

「そうだね、私も不安。けど、私たちにはみんながいる！やれることはしてきたんだし、きっと大丈夫だよ！」

仲間を信じているから言えているのりかの言葉を聞き、Aは深呼吸をした。

『そうですね、イナズマジャパンならきっと大丈夫です！』

笑顔で試合の準備をした二人だが、この後苦しむことになるなんて思うはずがない。

自分たちとイタリアの両方、イナズマジャパンがしたいサッカーとは違い、さらに違う意味でも苦しむ。

この試合が終わったらイナズマジャパンはどんな気持ちになるのか、想像もつかないことになってしまうということを。

いよいよ試合が始まると、イタリア代表はものすごいスピードでフィールドを駆け抜けて行く。

『速い…！』

異常なほどのスピードに、戸惑うイナズマジャパン。速すぎる動作に、目すらついていけない。そして…

(あれは…？)

Aは試合が始まって三分足らずの時間で、違和感をおぼえた。

速さに対抗できずにいると、イタリア代表が早速シュートをうつ。

「アンバランス・ピサ！」

イタリアで有名なピサの塔を使った必殺技。4人で使うその技は、威力も当然強いと思われた。