二人の“キズナ”【吉良ヒロト】 (ページ24)

今日:9 hit、昨日:27 hit、合計:9,196 hit

不安なことページ24

イタリア代表に勝つための策、それは…

「ラストリゾートです」

未だに未完成のラストリゾートだった。やはり豪炎寺のような選手でなければできないのかと不安に思っていた、明日人、灰崎、野坂。

その三人が次の試合でラストリゾートを使わなければならないのだ。

子文曰く、イタリア代表はイナズマジャパンのことを徹底的に調査し尽くしているため、今までの技やタクティクスは通用しないとのこと。

「次のイタリア戦、ラストリゾートをぶちかますことができたら、道は開けるでしょう」

監督は最後に付け足した。

「ラストリゾートが使われたのはアジア戦で1度きりですし、あの技は分析された所でどうにもできないでしょうからね」

ラストリゾートがあればどうにかなるということは分かったが、それ以外にイタリア代表の対策がない。試合ではどう挑むのか。

ラストリゾートを練習する明日人たち、皇帝ペンギンの進化に励む風丸たち、一人シュートを続ける小僧丸。

イタリア戦に向け、それぞれができることをしていた。

そんな中、Aは資料を読んでいる。

『えっと…？この漢字は…』

「チューリップ。正式には“うっこんこう”」

Aが一人言を言うとヒロトが背後から声を出した。

『ヒロト！？いたの？』

「休憩だ。で、なんで漢字辞典なんか見てんだよ」

『私、学校行ってないから漢字が読めなくて…。漢字が読めないと全然資料が読めないの。けどこの漢字は難しいし、読めなくてもよかったかも』

チューリップとは“鬱金香”と書く。中学生が読むには難しく、あまり使わない漢字だった。

「それ漢字検定とかに使うやつだろ。そんなんじゃ分かるわけねえ、もっと簡単なのにしろよ？」

『最低限の漢字が読めればいいもんね、ありがとう。
けどどうしてチューリップなんて読めたの？』

「たまたま見たんだよ。姉さんが買ってきたことがあって、プレートについてたのがこの漢字だった」

『そうなんだ。
ねえヒロト、私どうしたら野坂くんとか一星くんみたいになれるかな…』

Aは急に凹み出した。

「なんだよ、スランプか？」

『その言葉だって分かんない。私は世の中のことも言葉の意味も漢字も分からない。それなのに観察力が高くたって、気持ちを表せなきゃ意味が無い』

Aは不安そうな表情を見せた。