すれ違う気持ち ページ12
『そんな優しさ…いらないよ。ヒロトが言おうと、絶対帰りたくない！今のメンバーで優勝したいのに、サッカーがやりたいのに！』
Aは気持ちをぶつけた。自分の覚悟も。
『ほんとに怪我したってやられたって、後悔はしない。最後までやりきれるなら』
「俺は！Aが傷つくのはもう見たくねえんだ！俺のとこに来たAはずっと傷ついてた。俺は絶対Aを守るって決めた！」
「これ以上傷ついて、AがAじゃなくなるのは見たくねえんだよ！」
『私は…っ』
ヒロトの主張になんとも言えず、Aは部屋を出て行ってしまう。
「何やってんだ俺…」
ヒロトは本当に言いたいことじゃない、と今考えて思った。
本当なら、帰れなんて言うんじゃない。本当なら、俺が守ってやるから、安心してプレイしろ、そう言いたかった。
オリオンを前に、考えが一転してしまっていた。
Aが今何を思っているか、知りたいヒロト。
だが、しばらくはAと話すことも出来ない。
ヒロトは部屋を出て、自室に一人で寝転んだ。
Aは部屋を出てから走り続けている。向かった場所は特になく、気づけば食堂。
「Aさん？どうしたんですか？」
たまたまAがいるのに気づいた杏奈は、料理を作っていた手を止めてAに話しかけた。
『杏奈ちゃん…』
Aは杏奈を前に号泣し始め、そこにつくしも来た。
「Aちゃん！？どうしたのー！？」
Aに水を飲ませて落ち着かせると、問う。
「何があったんです？」
『私…日本に帰らなきゃいけないんですか？』
Aはいきなりすぎることを言うが、通じない。
「帰らなくていいんだよ！？ほんとにどうしちやったんですか〜！」
「落ち着いて話してください。ちゃんと聞きますから」
『はい…
さっき、ヒロトと話してたんですけど…』
何があったのかを説明すると、すぐに理解した二人。
「そっかーヒロトくん、Aちゃんのこと好きだもんね」
『な、なんで知ってるんですか？』
「みんな知ってると思いますけど…二人は付き合ってるんですよね？」
なぜ知っているかは、いつもの雰囲気だと。知らないのは明日人や円堂など、鈍い者たちくらいだと言う。
そこまで知られていることに、少し恥ずかしがるAだが、周りは気にしていないと。
人数が少ない分情報が回るのは早いものだ。
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