壱。 ページ2
*
＿ピロン。
体育館にメッセージの着信音が響いた。
「誰か、携帯なったぞ」
「ん？ああ、俺だ。さんきゅう花巻ぃ」
マッキーが岩ちゃんに向かって携帯を投げた。
「岩ちゃん、誰から？」
「Aだよ」
え、女の子の名前？！
「なんだよ岩泉、彼女出来たんならか言えよ」
ニヤニヤと肘で岩ちゃんをつつくまっつん。
「あぁいや、Aはそういうのじゃねぇよ。趣味仲間だ」
「趣味仲間…？なにそれ」
「てか、お前もアイツ知ってんだろ」
「えぇ、そうだっけなぁ」
「入学式の日、散々騒いでたろ」
入学式？
…あ。
「も、もももしかしてぇ、あの本好き美少女のこと？」
「そう、それだ。お前がしょげて帰った後、俺に本を貸してくれたんだよ。それから、こう、仲良くなった」
ぽりぽりと頬を掻きながら恥ずかしそうに話す岩ちゃんに俺は無性にむかついた。
「ちょっと、先にあの娘を見付けたのは俺だよ？横取りとか酷いよ岩ちゃん」
俺が頬を膨らませて起こると、サーブ練習をしていた国見ちゃんが振り向いた。
「及川さん気持ち悪い…あ、すみません。何でもないです」
「ちょっと国見ちゃん！聞こえてるから、ねぇ」
気になっていた女の子は幼馴染に盗られ、後輩には気持ち悪いと言われた。
なんというか…
すごく、
「及川さんの事可哀想だと思わないのかな！！ねぇ、もっといたわってよう」
泣きたくなった。
*
続く
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作者名：千部 | 作成日時：2017年3月21日 22時
