序章。 ページ1
*
_入学式。
といっても3年生の俺、及川徹には関係ない…
こともない。
何故なら、
「なにあの人モデル?」
「やばいめっちゃかっこいいんですけどぉ」
美味しい思いをするためである。
イケメンの俺は、入学前から会いたがってくれてた可愛い娘達に顔を見せなければならない。
ふふ、いい気分だよね…ってやば。
「おいクソ及川。こんな所で何してんだ、あぁ?さっさと体育館来い」
「あっははぁ、岩ちゃん今日もかっこい…うぐぅ」
岩ちゃんこと、岩泉一。
俺の幼馴染。
「いたいよ岩ちゃん!何も殴らなくたっていいじゃん。及川さんの美貌に傷が付いたらどうするのさ」
「てめぇの顔なんざ殴って殴って殴りまくって、顔中に包帯巻いてしか歩けなくしてやるよ」
「人を勝手にミイラ男にしようとしないで!!」
そう叫んでから、岩ちゃんなんかもう知らない!という気持ちを込めてくるりと後ろを向いた。
そして、
恋に落ちた。
視界に入ったのは、熱心に読書をしている一人の女の子。
艶っぽい黒髪。
陶器のように白い肌。
文字を追う瞳。
こんな気持ちは初めてだ。
俺はたまらず彼女に近寄り、隣のベンチへ腰をかけた。
「天気良くて、よかったよね。え、えと、新入生…だよね?」
「…はい」
声の震えを誤魔化しながら話しかけるも、彼女は本から目を逸らさず、つまらなそうに返事した。
「君、すごく可愛いよね。及川さんのタイプかもっ」
「…それは、どうも」
大体の女の子はこれで頬を赤らめてくれるはずなのに、彼女は本を読んだまま返事した。
ううん、まいった。
こんな娘初めてだ。
俺が考え込んでいると
「おい、テメェ何してるんだよ」
「何ってお喋りだよ!新入生とenjoy talking」
「とてもそうは見えねぇけどな…って、その本!川下弘美の最新作じゃねぇか」
岩ちゃんが彼女に向かって言った。
全く、俺が駄目だったんだから岩ちゃんなんて無理無理。
「そ…そうです!発売日に並んで頑張って買ったんです!ずっと楽しみにしてて、期待通り…いえ、以上の面白さですよ」
…?!
幻覚?
幻聴?
「まじかよ!俺、川下弘美ファンでさぁ、独特の世界観とか、ちょう好き」
「本当ですか?私も川下弘美大好き!生々しい表現なのにとても美しいところとか」
俺の目の前には、別人の様に目を輝かせた彼女が居た。
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作者名:千部 | 作成日時:2017年3月21日 22時