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A母「三ツ谷さんは、デザイナーを目指しているのよね？」
三ツ谷「はい。まだまだ遠い夢ですが、いつか独立したいと思ってます。」
A父「…。」
三ツ谷は黙って自分の話を聞いている父親の様子に気が気ではなかったが、意を決して言った。
三ツ谷「はじめましてで、子どもができたので結婚させてほしいなんて、簡単に言えません。今日は、とても情けないことを承知の上で、お願いに参りました。」
A父「お願い？」
父の眉毛がピクリと動く。
と同時に、三ツ谷も唾をゴクリと飲む。
三ツ谷「Aさんが大学を卒業したら、結婚させてください。僕は…それまでに、デザイナーとして仕事を確立させます。」
人の返事を待つのが、こんなに恐いと思ったのは初めてだった。こんなに自分の心臓音を感じるなんて金輪際ないんじゃないかと思う。
三ツ谷「金銭面と子育ての援助を、その間だけでもいただけないでしょうか。」
A「隆…。」
A父「よく言い切ってくれたね、三ツ谷さん。」
三ツ谷「えっ…？」
A父「理想ばかり…くだらない戯言を並べるやつなら殴ろうと思っていた。」
A「…。」
A父「頼ることを、情けないなんて思うんじゃない。誰かに頼れる人は強いんだよ、三ツ谷さん。」
三ツ谷「…っ！」
その時、Aの母がクスッと笑った。
A母「実はね、Aから、妊娠のことは聞いてたのよ、三ツ谷さん。」
三ツ谷「…えぇっ！？」
A「たまたま隆との電話聞かれちゃってさ…ごめん、黙ってて。」
A父「…合格だな。」
三ツ谷「それはつまり、…Aさんとのこと認めていただけるってことですか？！」
それまで固い表情だった父の顔は、柔らかい笑顔になっていた。
三ツ谷「あ…ありがとうございます！俺…必ずデザイナーになって、Aも子どもも、幸せにします！」
A母「私達はもう家族よ。これからよろしくお願いしますね、隆君。」
三ツ谷「は、はい…お母さん。」
A「ありがとう…お父さん、お母さん。」
____________________
三ツ谷「製作に没頭できるならどこでもいいんだけどよ、できるだけ家から近くて安いほうが助かるんだよな。」
林「…ぱーちん、やっぱりさっきのところ大家と交渉してみっか？」
林田「三ツ谷が父ちゃんになるんだもんなぁ…。考え深いよな。」
三ツ谷「…”感慨“深い、な。」
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作者名：miyuu | 作成日時：2022年1月21日 17時
