そこはかとなく君を (ページ33)

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万次郎「…っうぅ…」

Aと武道の言葉に、腹の底から湧き上がる悲しみが、嗚咽となって現れ始めた。

九井「マイキー…。」

まるで子どものようだと九井は思った。

殺し合いの喧嘩のはずなのに、王となるはずの新たな始まりの日になるはずだったのに。

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春千夜「勝手なことしやがって…！！！」
三ツ谷「…っ！同じ手には乗らねーよ！！」

武道「千咒は…？！」
千咒「私は大丈夫に決まってるだろ。」
武道「…お、おう…！」

千咒「三途春千夜！…いや、春兄！」

三ツ谷・武道「？！」

春千夜「…俺に兄妹はいねーよ！」
千咒「じゃあ寝言だと思って聞いてくれ。」

春千夜「なら寝て言えや…っ！！」
三ツ谷「聞いてやれ馬鹿野郎！」

なおも妹に殴りかかろうとする姿に、三ツ谷は激怒していた。
渾身の一撃は春千夜の右頬に入り、春千代は地面に倒れこんだ。

千咒「私だって…あんたを兄貴だと思わないようにしてきた。でも…その傷が私を守るためだったって知ってるんだよ…。」
春千夜「…は？何自惚れてんだてめぇは。」

＿＿＿＿＿＿＿＿＿
(千咒回想)

母さんは狂ってた。
自分の顏が醜いって。私より醜い顏が家族にいないって…

母「同じ女なのになんであんたは…」
千咒「やめてよ…お母さん！！」

ナイフを持って近づいてきて、殺されると思った。
そしたら、

春千夜「母さん…僕の顏見て？」
母「春…千夜…？」
千咒「春兄…？手に…血が…えっ…？」

血だらけなのは、手だけじゃなかった。
春兄の口回りが血だらけで、

それなのに春兄は笑ってた。

そんな姿を見た母は「私の味方は春千夜だけだ」って言いながら、救急車も呼ばずに春兄を抱きしめてた。

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千咒「…母さんや春兄と離れて、次に春兄を見たのは東卍の特攻服姿だった。」

春千夜「…。」

千咒「母さんの精神異常はひどくなっていく一方だった。でも、春兄は私の“フリ”をして会いに行ってるよね？…『千咒の髪は“長くて”きれいね、春千夜』って、母さん、この前私にそう言ったの。」

母さんはもう、子どもの判別もできない。

春千夜「…っ。」

千咒「武兄とは異母兄弟妹で、元々一緒に住んでなかった。春兄と会えなくなってからしばらくして、武兄が会いに来た。それでもう一人私には兄貴がいるってことを知ったんだ。」

千咒「武兄は、私たちを繋ごうとしてくれてた。でも…実際はこの有り様だ。」