54.約1年前(Your side)-2 ページ4
「…あ、こんにちは。今日もさぼりですか?笑」
??「そんなところです(笑)」
ふらっと立ち寄った公園で出会った彼。
会う約束をしているわけではない。
お互いに来たいときに来て、会ったら話をして…。
名前も知らないし、年齢も分からない。かといって、お互いのことを聞くわけでもない。
なんとなく、聞いたらいけない気がして、聞いてしまったらもう会えなくなるような、
そんな気さえしていた。
私は、彼に会うことが楽しみになっていたのかもしれない。
―――
ある日、彼が一眼レフカメラを首にかけてやってきた。
日本にいた頃、私もカメラにハマったことがあった。
聞いたところによると、彼は趣味で写真を撮っているそうだ。
なぜかすごく気になって、
半ば強引にお願いして、写真を見せてもらった。
ある1枚の写真にひどく心を奪われた。
「…きれい。」
夕日によって真っ赤に染め上げられた公園。
色づく木々が、さらに深みを帯びて幻想的な雰囲気となっている。
彼は何者なのだろう。
こんな風景に出会える運の持ち主だ。
きっと今は学生だとしても、将来すごい人になるのかもしれない。
「写真撮ってくれませんか?」
気づけばそうお願いしている自分がいた。
――――
何を勘違いしたのか、彼は
写真を撮る=私と一緒に写真に写ってほしい
という意味に捉えたらしい。
え、何で?(失笑)
…
…
そんなこんなで、彼に写真を撮ってもらえることに。
この写真のように、夕日と一緒に撮ってほしい、とまでお願いしちゃったんだよね。
おこがましいことは分かっていたけど、彼となら、この奇跡の瞬間と出逢えるんじゃないかと思った。
それに、私にはもう時間がない。
気づけばもう、帰国を明後日に迎えようとしていた。
「明日って…サボりの日ですか?」
これまた急なお願いをしたにも関わらず、彼はOKしてくれた。
彼に会えるのは、きっと明日が最後だ。
(最後くらい、名前聞いてみようかな。)
それじゃ、と言って別れた私たち。
この時、
一度でもいいから振り返って
彼を
目に焼き付けておけばよかった。
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作者名:miyuu | 作成日時:2018年10月6日 11時