７４． ページ24
――In 東京
サオ「…あ！AA−！」
「…おはよ。」
東京に来るのも、サオと会うのも一緒に仕事をしたあの日以来。
結局私も、肇さんと話をしたのを最後に、サオにはちゃんと御礼が言えないまま、お世話になった会社を後にしていた。
――――
(相変わらず平日でも人が多いなぁ。)
人通りの多い道を２人で歩く。
サオ「…元気にしてた？」
「もちろん？」
ぎこちない会話。
あの日以来、私もサオもお互いに申し訳なさを感じていたせいか、ちゃんと話せていなかった。
「とりあえずカフェでも入ろうよ？」
サオ「…うん、そうだね。」
――――
サオ「Aのバイト先もこんな感じのお店なの？」
「ん〜…もうちょっとこじんまりしてるけど、雰囲気は似てるかも。」
サオ「そうなんだ＾＾」
「…で？早速だけど、本題をお願いします。」
サオ「…了解。」
サオは周りを気にしながらバッグから封筒を取り出した。
サオ「それがさ、会社に私宛にメール便が届いたの。親展だったし、誰も開けないでいてくれてさ、ずっとデスクに置きっぱなしになってたの。ただ、韓国のBTSの事務所からのものだったから、肇さんも『お前が急きょ手配してくれた通訳への御礼じゃないか』って言うし、指摘されて急いで確認したの。そしたら、…手紙とこれが入っててさ。」
はいこれ、といってサオが提示したのは２通の手紙と…
「…え、東京ドーム公演…のチケット？」
“このてがみを、Aさんへわたしてもらえますか？”
サオ「こっちは私宛に書いてくれたみたいでさ、こっちの手紙…A宛の方は私も読んでないから安心して？」
「私に？」
そこにはたどたどしい日本語と韓国語が並んでいた。
“Aさん、お久しぶりです。キムテヒョンです。おげんきですか？ぼくたちはことし、ワールドツアーをしています。しっていたらうれしいです。日本にいきます。東京ドームでコンサートします。きてもらえませんか？お世話になったお礼のかわりに、パフォーマンスをAさんにみてほしいです。”
「テヒョンさん…。」
サオ「…何て？」
「東京ドーム公演、観に来てほしいって。お礼が言えなかったからって。」
サオ「謙虚な人たちだよね、彼ら。律儀に私の分のチケットまで送ってくれちゃってさ！」
「…本当だね。もう彼らは雲の上の存在みたいなのにね。」
サオ「…ねぇ、Aはさ、テヒョンさんがお礼だけのためにこんなことしてくれたと思ってる？」
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作者名：miyuu | 作成日時：2018年10月6日 11時
