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JK side
メンバーも、それからスタッフも、みんな僕に気を遣って励ましてくれた。
ダンスができないこともショックだし、それ以上に公演を待ってくれている現地のファンに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
キム「ヨーロッパ公演はすべて椅子に座って歌う、いいな?」
「はい。」
――――
気持ちを切り替えようと移動中の飛行機の中で何度も何度も組み替えた演出を確認し、踊れないのなら歌にしっかり集中しよう、とか考えては後悔の念に襲われて、
「…ッ。」
今にも泣きそうな心を必死に食い止めていた。
――――
ヨーロッパ公演 in ロンドン
TH「グク、ちょっといい?」
ウォーミングアップ中のヒョン達を見ながら、僕はリハ室の端で椅子に座り発生練習をしていた。
そこへテヒョニヒョンが声をかけてきた。
「どうかしました?」
TH「んー、元気かなと思って(笑)」
…テヒョニヒョンらしい。
「元気ですよ。…ただ、踊れないことがこんなに悲しい悔しい…って思うのは久しぶりです。」
TH「そうだよなぁ。」
僕の隣に腰かけて僕と同じようにメンバー達を見つめるテヒョニヒョン。
TH「…でもさ、ピンチはチャンスってよく言うじゃん?」
「え…?」
フッと笑って、ヒョンは真っすぐな目で僕を見る。
TH「きっと俺らには見えない景色がグクには見えるんじゃないの?この公演でさ?」
「僕にしか見えない景色…ですか?」
うんうん^^、と笑って再びメンバーの練習に加わっていったテヒョニヒョン。
〜♪〜♪
僕を除いたメンバーでのダンス練習が始まった。
…、
踊りたい。
叶えられない思いが膨らんでいく。
急ピッチで進められた演出の組み直し、
僕は歌うことしかできない、
東京以外の日本公演も間に合わないかもしれない…
“ピンチはチャンスっていうじゃん?”
(どういうことだろう…?)
目を瞑って想像してみる。
“A「海とか青空とか、そんな映像をバックに、ジョングクさんだけがステージに立っていて、のびやかに、すごく幸せそうな笑みを浮かべて歌っているイメージなんです。」”
…また、Aさんを思い出した。
“A「ファンの皆さんと手を振りあって、ファンの皆さんの手には…ひまわりかなぁ、黄色いお花が握られていて。会場がお花畑の様で…。」”
…
「そうだ…!」
僕はバッグからノートを取り出し、無我夢中でペンを走らせた。
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作者名:miyuu | 作成日時:2018年10月6日 11時