６１． ページ11
入ってきた肇さんを一瞥し、
「…短い間でしたが、大変お世話になりました。」
肇「…小橋さん！」
出て行こうとすると、肇さんに腕をつかまれた。
「…離してもらえますか？」
肇「お話が…あります。」
――――
「正直混乱しているんです。なぜ自分がずっと大切にしているピアスのことでこんなに大事になっているのか…理由は先ほどキムさんから伺いました。」
肇さんはずっとうつむいたまま、うなずく動作だけをしている。
「そのピアスが、たまたまテヒョンさんが着けていた片耳デザインのもの？と同じだそうですね？ちょっと前にテヒョンさんのものが盗まれたとお聞きしました。キムさんやあなた方がどう思っているのかは分かりませんが、つまりは盗んだ犯人が私だとか、この写真からして同じものをつけているということは、テヒョンさんと何か関係のある女性…そういう風に考えられるということですよね。」
「キムさんは私を後者だと、私の身を案じて、彼らから引き離すようなことをしてしまった、とおっしゃっていました。」
肇「…実は今日、あなた方には黙っていましたが、尾行させていました。」
「は…？」
肇「それは私の案です。」
「どういうことですか？」
肇「私だって…、あなたが盗んだ犯人だとか彼と関係を持っているとは微塵も思っていません。ただ…会社としては、雇ったスタッフとのスキャンダルには違いない。あなたの写真を撮ったのは、これも偶然で…。昨日、キムさんにスタジオ内でのBTSの様子をファンクラブサイト向けにアップするからと撮影を依頼されたんです。それで、ちょうどあなたが写り込んでいたものがピックアップされたんですよ。」
「…。」
肇「あなたを彼らに同行させることが決まった後、その写真がサイトにアップされたのですが…ネット上で写真が拡散され始め、検証サイトができているとの報告があり、急遽尾行をつけて、…申し訳なかったのですが、あなたに不信な動きや言動がないかを確認させていました。」
「…。」
肇「偶然だとしても、いろんなタイミングが悪すぎたとしか…」
「肇さん。」
「私は通訳であり一般人です。だいたい私なんかが彼らと噂になるような人間じゃないことくらい、私自身が一番よく分かっています。」
もはや笑えて来る。
「彼らに会うことは、もうないと思います。それに彼らはもう、きっと、次に日本に来るときにはもっと、すごいアーティストになっているでしょうから。」
肇「…。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：miyuu | 作成日時：2018年10月6日 11時
