きみとふたり 2（tkin） (ページ4)

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いっかいだけページ4

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「あのさぁ、たかきぃ」

伊野尾くんが弄っていたスマホを置いて隣に座る俺のスウェットの袖を引っ張って言う。

何？と言えば、なんでもないってまるで子供みたいな顔をして彼は笑う。

そのあとも何度も何度も名前を呼ばれては、なんでもないの繰り返し。

最初のうちはちゃんと返事をしてあげていたけど呼ばれた数がもう両手くらいになってからは
「んー」とか「はーい」くらいしか返事をしなかった。

そうしたら伊野尾くんは急に俺を抱き寄せて、ちゃんと聞けよバカって怒る。

聞くも何もさっきから名前ばかりじゃないか。

聞いてる聞いてるって伊野尾くんの飲み残しの水を口に含めば、
ぷぅーっと口を膨らませて、もういい！と彼は寝室に逃げてしまった。

なんなんだ、かまってちゃんかよ。

可愛いけどもう伊野尾くんも三十路になるんだよな、変な感じ。

そう思いながら逃げる猫ちゃんを追って寝室の扉を開ける。

『いのーくん』

「……」

『伊野尾くん、何？』

「……」

『言ってくんなきゃわかんないよって前喧嘩した時約束したよね』

「……だって」

『うん？』

「お前気づかねぇんだもん」

『何を？』

そう問い返すと、ほんっとばかぎ！と枕を投げられた。

2人で使ってる大きめのだからなかなか痛い。猫にひっかかれた気分。