きみとふたり 2（tkin） (ページ19)

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「っ、やめろ」

『伊野尾くん』

「だからやめろって言ってんだろ」

『伊野尾くん』

「だからやめっ」

『伊野尾くん、いいから』

包んだ手を背中にまわして抱きしめる。
伊野尾くんの匂いがして思わず泣きそうになった。

「っ、はなせ、よ」

『俺は伊野尾くんと生きて生きたい』

「やだっ、やめ、」

『伊野尾くんと同じ景色を見ていたい』

「っはな、せ」

『おはようって言っておやすみって言うのは伊野尾くんがいい』

「っ」

『俺も子供好きだよ。翔平もすげえ羨ましかった』

「っじゃあ！」

『でもね、それは伊野尾くんがいる前提なんだよ』

そう言うと伊野尾くんはネジの取れたゼンマイのおもちゃのように動かなくなった。
ポンポンと背中を叩いてやると悪態は嗚咽に変わっていく。

「お、おれがいたら、たかきはっ、しあわせにな、れない」

『どうして伊野尾くんが俺の幸せを勝手に決めるの？』

「っ！だって、たかき、はいい父親、になるか、ら」

『それは伊野尾くんもでしょ』

「おれはそんな、の、いらな、い」

『うん？』

「うっ、ごめん、すきになって、ごめん、」

『そんなの』

そんなのお互い様でしょ。
愛なんて二人いないと完成しないんだから。
自分でも驚くほど臭いセリフを伊野尾くんに言うと、泣き声はもっと大きくなった。
俺まで涙は何故か零れた。
気づいたら好きになってて、相手も奇跡のように俺をすきになってくれた。

その奇跡が少し形が違っただけなのにどうしてこんなに彼は苦しまなきゃいけないんだろう。
それでもどんなに伊野尾くんが今苦しんでても、
未来の伊野尾くんを笑顔にする自信は俺には有り余るほどあって。