きみとふたり 2（tkin） (ページ17)

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『来てくれてありがとうな、雄也。伊野尾くんも本当にありがとう。』

「あっ、いえ、この度はおめでとうございます」

『俺達こそ急だったのにごめん、これロケ帰りに買ったやつ』

『わ、わざわざ悪いね』

『奥さんつわりとか大丈夫？』

『あっ、大丈夫大丈夫。なんか有難いことに無くてさ』

一言だけ話した伊野尾くんはまた仮面のようなニコニコを付けて斜め後ろに立つ。
そうするとリビングの向こうから奥さんがやってきて少しお茶でもと誘ってくれた。

もう安定期に入ってお腹も少し膨らみ始めてると翔平はゆっくりとした口調で教えてくれる。
隣で奥さんはそっと微笑みお腹を何度か撫でた。
入れてくれたコーヒーの湯気が少し揺れる。
そんなふたりの様子を伊野尾くんは仮面を外して素の彼で柔らかく眺めていた。

どんな気持ちなのかこの時ばかりは読めなかった。

『予定日とかわかるの？』

『冬前になるのかな？』

「そうだね、11月前後辺りかな？」

微笑ましいやり取りに俺も口角が上がる。
コーヒーをひと口すすると伊野尾くんも真似して啜った。
苦手なコーヒーを伊野尾くんはこれでもかと言うような勢いで飲む。
入れる？と聞いた砂糖を頑なに拒んでついに飲み干してしまった。

長居も良くないと、俺も伊野尾くんを追ってコーヒーを胃に収めて立ち上がる。
伊野尾くんもバネが伸びたように隣に立った。

『もう帰んの？』

『大事な時に長居出来ねぇって』

『律儀なの雄也ってぽくて俺は好きだよ』

『うるせー』

『伊野尾くんも本当にありがとう、また3人で飲みに行こ！』

「…あっ、はい是非」

『あ、もし良かったらお腹撫でてくれない？』

「私からも良かったら是非」