トリップしたら幸せになったんだけど？

過去の思ひ出 壱 ページ14

目を開き、一番はじめに映ったのは少女の顔だった。

何処かで見たことがある気がするけど、何処でだったかは分からない。

??
｢ねえ、____くん！ちゃんと聞いてる？｣

少女は僕の方を向いて話しかける。
誰の名前を呼んだのかはわからないけど、きっとそれは魁斗なのだろう。
だってこれは、魁斗の過去なのだから。

あと一つ、言いたいことがある。

｢(何で魁斗になってるんだろう……)｣

いつもより低い場所を映す目。
声変わり前特有のソプラノ声。
___先程会ったばかりの彼に似た人物を映す鏡。

絶対にこれ魁斗だよね。
魁斗の体だよね。

??
｢もう！ちゃんと話聞いてよ｣

そんな事を延々と考えていたら再び少女の声。
前を見ると頬を膨らませてこちらを睨んでいる。

魁斗(仮)
｢そんなに怒らないで、____ちゃん｣

??
｢____がちゃんと話を聞いてないからでしょ？！｣

やっぱり何処かで見たことがある。
何処でだったかな……


すると突然目の前が歪んだ。
その歪みに耐えきれず目を瞑り、数分後目を開けた。

目の前に映し出されたのは先程とは違う場所。
目線が変わってないことからあまり日は経っていないんだろう。

??
｢ねぇ、貴方。私とコンビを組まない？｣

頭上からの声に顔を上げると、其処には先程の少女が成長して目の前に立っていた。

でもおかしい。
何で知ってる人なのに“貴方”何て言うのか。
それに何で彼女だけ成長しているのか。

魁斗(仮)
｢嗚呼、いいよ｣

そう応えると少女は目を見開き、その後嬉しそうに微笑んだ。

その姿を見て、私は魁斗が杏を降った理由がわかった。
魁斗はこの子のことが好きなんだな。

だとしたら杏を振るのも当たり前だ。
この子が好きで、今も忘れられないんだろう。
だとしたら杏にそう伝えてあげればいいのに。

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