37 初めて見る色 ページ37
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「…離して!」
その全てに耐えられなくて 精一杯の力で彼の胸を押し返した。
その瞬間、視界の端に映った彼の傷付いた表情に胸がちくりと痛んだ。
「…ごめん」
今にも泣き出しそうな表情をしているシフン。
「ほんとに好きなんだ。……それは幸せになれない恋だよ。分かってるんだろ?」
やっぱり彼は全てを分かっていて。
私は彼の傷付いた瞳を見つめ返すことが精一杯で。
「俺なら絶対に幸せにできる。
俺のことを好きにさせてみせる。
……だから俺とのこと真剣に考えて」
シフンはそれだけ告げると すれ違いざまに「ごめんね」と小さく呟いて、校門を潜り抜けていった。
彼の姿が見えなくなった途端に、また汗がどっと溢れた。
心臓はどくどくと相変わらず激しく鼓動していて、全身に血が行き渡るその様さえも感じられる。
彼の想いに驚いたのもそう。
けれどそうじゃなくて、私のテヒョンへの想いが気付かれていたことに、私は言葉が出なくて。
シフンは昨日テヒョンと一緒にいる私を見かけたと言った。きっと学校に迎えにきてくれたテヒョンと一緒にいるところだろう。
それを思うと冷汗が溢れる。
側から見て、私の想いはそんなに分かりやすいのだろうか。
だって、ただ一緒にいただけ。
それだけでバレてしまうぐらい、そんなに態度に出ていたのか。
色んなことを考えてしまい、一瞬で怖くなる。
それを誤魔化すように頭を振って、この嫌な注目から逃れるために走って校門を潜り抜けた。
「…わっ!……あ、テヒョン…」
校門を潜った瞬間に誰かにぶつかりそうになるも、その相手がテヒョンであることが分かって一気に気が緩んだ。
相変わらず帽子を深く被って、マスクを目の下ギリギリまで上げているテヒョン。
「…テヒョン遅いよ」
そんなことを言っても仕方ないのに、今起こった一連の出来事を遅れてきたテヒョンのせいにしたくて。
けれどそんな私の勝手な思いに返答はない。
「…テヒョン?」
TH「さっきの誰?」
「え?」
TH「さっきAのこと抱きしめてたの誰?
A、彼氏いたの?」
あまりにも冷たい声色に ぞわっと鳥肌が立った。
焦ってテヒョンの瞳を見ると、今まで見たことがないような、そんな色を瞳に灯している彼。
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ナノカ(プロフ) - ここあさん» ここあさんありがとうございます!ひゃ〜嬉しすぎてスクショしました!(笑)早くこちらの続き書けるように頑張りますね。いつもありがとうございます愛してます(*^^*) (2020年8月24日 21時) (レス) id: 59d638975a (このIDを非表示/違反報告)
ここあ(プロフ) - こんばんは!もうすでに何回も読み返しました。ナノカさんの文章って読むだけでその背景が頭に映し出されてドラマを見ているみたいです。続きが気になってまた睡眠不足かな(´;ω;`) (2020年8月9日 0時) (レス) id: 0e5cf05a43 (このIDを非表示/違反報告)
ナノカ(プロフ) - ナオコさん» さすがナオコさん!私のことよくお分かりで…!(笑)波乱おこしまくります!繊細で儚げ…嬉しくてにやけました!ナオコさん今日も大好き!! (2020年8月7日 1時) (レス) id: 59d638975a (このIDを非表示/違反報告)
ナノカ(プロフ) - メグさん» メグさんありがとうございます( ; ; )そんなそんな…と思いつつもにやけてます(笑)ゆっくり更新頑張っていきますね!お心遣いありがとうございました! (2020年8月7日 1時) (レス) id: 59d638975a (このIDを非表示/違反報告)
ナノカ(プロフ) - ココアさん» まだまだお話長くなりそうなので是非最後まで覗いてやってください!ありがとうございます(*^^*)頑張ります! (2020年8月7日 1時) (レス) id: 59d638975a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナノカ | 作者ホームページ:
作成日時:2020年4月30日 17時