部下、ミンギュの苦悩 ページ2
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エレベーターを待つ間に辺りを見渡せば社長室とは正反対の位置に異様な雰囲気を放つ空間があった。
どうせこの1000年と同じ様に変化は無いだろうが、“社長”のせいで荒ぶった気持ちを抑える目的にでも少し覗きに行くか…とエレベーター前から方向を変えた。
もう慣れたもので、その圧倒されそうなオーラの滲み出る扉ももう怖くはない。
いつだったっけか。
まだ200年目くらいの頃は恐ろしくてヒョン達や同期達と一緒じゃないとドアノブすら触れる事など出来なかったのに。
これが時の流れか、なんて少し老いた気持ちになった。
物思いに耽りながらその部屋に入ると、やはり変わらず部屋の真ん中には大樹があった。
空間を無視して高く高く、そして太くそびえ立つその木は薄らと光り、ミンギュはつい目を顰める。
『聖なる木』
もとい彼の上司であるイジフンの命を握るもの。
そして同時に忌々しき存在。
どちらかと言えばミンギュらは明るき道を歩んできたと胸を張って言えるような者ではない。
常に光から目を背け、その足元から広がる暗闇よりも深い黒い影を踏みながら裏の世界で気の遠くなる程長い時間を歩んできた。
そんな自分らとは正反対なのにもかかわらずこの1000年を共にした大樹に手を添えてみる。
皮肉にももう顔すら覚えていない両親よりも遥かにこの木と顔を合わせた。
相変わらず硬い皮に覆われていて、少し手に魔力を込めてみるもバチッと跳ね返って結局は自分の手を少々痺れさせた。
『はぁ…今日もダメか。』
ミンギュのため息は誰にも届くことは無かった。
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nell(プロフ) - はじめまして。ここで書くのも迷いましたが繋がりがないので失礼します。もしかしてですがTwitterのアカウントは消されましたか? (11月28日 23時) (レス) id: 43210a6b75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:太郎。 | 作成日時:2022年12月5日 21時