第二幕 ページ2
ショーは終わり、拍手と共に幕が下がれば私はやっと我に返った。
…どうしよう、どうしよう。まだ心臓が鳴り止まない。彼の笑顔が、声が忘れられない。
うるさい心臓を落ち着かせる様に、服の胸元をぎゅうと握り締めた。
「Aちゃん♪どうだった?まだショーって、子供らしいと思う?」
瑞希ちゃんの言葉に、勢いよく首を横に振る。
そう言えば、瑞希ちゃんは彼が私達の先輩だと言っていた。瑞希ちゃんに聞けば、彼に近付けるのかな。私の事を、知って貰えるのかな。この想いを伝えられるのかな。
様々な感情が、心の中で交差する。瑞希ちゃんに何を言えば良いのか分からない。でも、これだけは伝えたい。
「…瑞希ちゃん!天馬司先輩について教えて!」
その日は、家に帰り布団に入っても未だ夢見心地だった。
もっと、もっと彼について知りたい。
スマホを手に取り、『ワンダーランズ×ショウタイム』と検索してみる。
出てきたのは、観客が撮影したらしき彼らのショーの写真や今までのショーの記録。
写真からも伝わる眩しい笑顔に、私の心臓はまた騒ぎ始める。
……文化祭?
そう言えば、神高の文化祭でショーをやっているクラスもあったな。あの時は、興味が湧かなくて見に行っていなかったけど司先輩が出ていたんだ。見に行けば良かったな…今更、落胆しても遅いからこれから全部のショーを見れば良いだけなんだけど、やっぱり少しだけショック。
ネットにあげられている観客のレポを読んでいれば、次第に瞼が重たくなってきた。
次の日、学校に行けば校門前で誰かを注意しているクラスメイトの白石杏ちゃんの姿が見えた。
杏ちゃんは半ば呆れ気味の様子に対して、注意されている彼は笑顔を浮かべている。
…どういう状況?
良く見れば、注意されている彼はフェニックスワンダーランドのステージで司先輩と一緒にショーをしていた、確か…神代先輩?
瑞希ちゃんに教えて貰った名前をうろ覚えで、頭の中で思い浮かべていれば間違っていなかったようで杏ちゃんの「神代先輩!」という声が聞こえた。
彼の事が少し気になったし、彼に近付けば今後、司先輩と関わる事が出来るだろうという邪な考えで、話しかけてみる事にした。
「杏ちゃん!」
「A!おはよう!」
「おはよう、杏ちゃん。あの…どうしたの?」
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作者名:佐久間 | 作成日時:2021年8月19日 7時