秘密。２

純情。１／∞・緑 ページ1

忠義Side


「家の事業のために結婚しただけで、
惚れてんのはAだけや」


「嫁とは最初から気持ちなんて通ってない」


「けど、どうしても別れられへんねん。
嫁は大株主の娘やし。
合併話が終結すんのに、
まだ時間かかりそうで・・・
それに、嫁は世間知らずやけど、
なんの落ち度もないから、
離婚なんか認められへんと思う」


「けど、ずるいけど、
Aだけが、俺の支えやねん。
形は不倫て非難されるような関係やけど。
心におるんはAだけやから」


これが、情けない俺の、
嘘偽りない本音。


やからさ・・・


心だけでええから。


Aの中の一番を、
俺にくれへんかな。



高層ホテルの小綺麗な部屋。


俺のすぐそばで、
半裸で、ベッドにあぐらかいて・・・


「それ、クズの常套句。
忠義って、ほんと裏切らないよね。
安定の、クズ中のクズ。
立派なぐらい、クズを極めてる」


Aが嘲るように笑った。

タバコの煙をゆるく吐き出して・・・


まだ吸いかけのそれを、
灰皿に押し付けて、もみ消す。


「でも、そういうとこが、たまらなく好き」


振り返って、俺の首に抱きついてきた。


痩せぎすの嫁にはない、
柔らかい、むちっとした肌。

優等生でお嬢さん育ちの嫁にはない、
どことなく退廃的な大人の色気。


最低やって分かってても、
比較してまう。


「そういうとこ、って？」


「うん、利己的で保身に走るとこ」


「ちっとも褒められてる気ぃしいひんねんけど」


「褒めてないよ？
私は好きって言ってるだけで、
世間的には最低だとは分かってるよ？」


「なあ、今日も泊まれる？」


「無理。
旦那が海外出張から帰って来るの。
それに私、明日、仕事、早いから」


「そっか・・・」


声に残念さが滲み出てもうてるやろな。


俺は、都合のええ男なだけ。


「旦那はクズちゃうん？」


前々から聞いてみたかった。


「真面目で誠実を絵に描いたような人。
だからかな。
たまに、忠義みたいな、
ダメな人に会って、
息抜きしたくなる」

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