叩いてんじゃん ページ16
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再びドアが開く音がして
「お前らなにやってんだもう暗いから早く帰れ
本田が遅いから俺まで来ちゃったじゃんか」
やすくんの担任のヤマダが
いつものゆるゆるのジャージに片手をつっこんで
帰れ帰れともう片方の手でわたしたちを払う
「俺、めっちゃ不憫…」
はいはいと流して
ばいばいと手を振るわたしをジト目で見ながらも
ちゃんと手を振ってくれるやすくんは
とてもいいお兄ちゃんで普通に好き
ちょっとめんどくさいけど
まめちゃを連れて備品倉庫を出れば
辺りはすっかり夕焼け色に染まっていて
すっかり静かになった廊下をふたり並んで歩く
意外に長く掃除してたんだねーと
横を見上げると眉間にシワを寄せるまめちゃと目が合う
「あの人いいんですか？
仲良さそうだったけど、」
『いーのいーの従兄弟だから』
「ああ従兄弟ね、いとこ」
まめちゃは噛み締めるようにブツブツと繰り返し
心なしか顔も明るくなった
「チャリ取ってくるんで待っててください」
たたたと小走りで駐輪場に向かう後ろ姿を見送って
わたしは門に向かって歩きながらむふふとニヤついて
待ってる時間でLINEを開き
早速まめちゃにお気に入りのスタンプを連投した
「お待たせしました」
と爽やかにまめちゃが登場して端から見れば
わたしはさながら漫画のヒロインだっただろうな
まめちゃは自転車を押してわたしはその隣を歩く
青春じゃない？一回やってみたかったんだよねこれ
隣を見ればまめちゃと自転車
はあー最高の組合せ額縁に入れて飾りたい
後ろを向けば王子…
王子！？
王子がいる、昼間会ったあの王子だ
隣には景瑚くんが居て声掛けたいけど掛けたくない状況
しかもこのまめちゃとの青春を逃したくない自分もいる
なんという欲張り詰め合わせ
とかなんとか
もんもんと考えている内に駅に着いてしまった
せっかくの時間をムダにした気がする…もったいない
「じゃ、気をつけて」
駅の階段の前で止まり
一言まめちゃは残して自転車に跨がり去っていった
見えなくなるまで見送ってたら
覆い被さってきたデカイ物体
「おまえ最悪、叩くよ？」
「叩いてんじゃん、痛いよ〜」
わたしにくっ付いてケラケラ笑う景瑚くんと
ムスっとした王子が目の前に居た
ムスっとしてても素敵すぎるな
近くに居ると神々しくて緊張するし
やっぱりいい匂いがしてドキドキする
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作者名：★★☆ x他1人 | 作成日時：2020年8月13日 22時
