絵に描いたような青春、ください (ページ1)

今日:2 hit、昨日:17 hit、合計:24,025 hit

あページ1

.

『あ』

ふと思い出したことがある
ついこの間貸した500円返してもらってない、気がする

『ねえ、返して』

「突然なに？怖いんやけど」

主語が抜けてしまっては
伝わるものも伝わらないのは当たり前なので
ちゃんと言い直すことにした

『この間500円貸したよね？』

「それ俺ちゃうと思うよ？」

あれ？しょーちゃんじゃない…？
誰に貸したのかも曖昧な500円の行方は

「あーそれ、俺じゃない？」

翔也の一言で決着がついた

「自覚あるんやったら返しなよ」

「そういえばーと思ってたけど、ワンコインないのよ」

「100円5枚でええやん」

『まあ、手持ちないならしょーがないよね』

手持ちがないなら仕方ないし、
いま気づいただけでそんなに気にしてなかった
そもそも、翔也だったら期待すらしない方がいいな

「朝からゆっるい会話してんなー」

『ハイサイ先輩おはざます』

「いや、それやめて」

校門の前に立ってなにかしらしている
ガタイのよいお兄さんにあいさつ

あいさつは心と心の握手だって誰かが言ってたから

「奨くんおはよう」

「おはよ」

『爽やかだね、清涼飲料水のCM出てる？
　見たことないけど』

「見たことないんやろ、出てないんよ」

毎朝ご苦労様ですって労って
さりげなく奨くんのポッケに
朝食べようと思ってたチョコをお裾分けしておいた

溶ける前に気づけばいいなぁー
なんて考えながらゆるゆる昇降口へと向かう

靴箱を開けると出るわ出るわのラブレター

なんて一度でいいから言ってみたかったけど
何事もないポツンと置かれてる私の上履き

「うっわ」

バサバサっと音が聞こえた
夢の出るわ出るわのラブレター

『汐チャミモテモテー』

「なんやそれ、うっざ」

ため息漏らして落ちてる手紙を拾ってる
汐恩的にはめんどくさいのか、
わたし的には羨ましいけどな

「お前も手伝え」

『１枚くらいもらってもいい？』

「もらっても嬉しくないやろ、俺宛やのに」

『あ、そっか』

「アホ」

しぶしぶしゃがんで拾い集める
可愛いなこの便箋、字も可愛い

汐恩のことが好きって伝わってくるのがさらに可愛い

「まだー？先行くで？」

『しょーちゃんごめんやで』

「胡散臭いなー」

『ごめんやで』

「それやそれ」

『えー』

胡散臭いって言われたけど
教えてくれたの純正関西人の純喜くんなのに
京都人からしたら違うのかな…奥が深いな関西

.