◇21cm ページ29
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最近、自分が何かおかしいなと感じる。
プレーとかそんなんじゃなくて、マサ先輩といる時の自分がおかしい。
先輩の言葉、仕草、動き、全てに反応してしまう。ドキドキと過剰な反応。
「Aちゃん、ここのプレーだけどさ……」
名前を呼ばれる度に、体が熱くなる。だけど、もっと呼んでほしい。
「今のレシーブ、良かったね」
ポンポンと撫でられる度に、触れられたところが熱くなる。だけど嬉しい。
「どうかしてるよ私………」
憧れの先輩が近くにいすぎて、興奮が冷めないのかもしれない。
「どうかしてるのは今更でしょ」
「げ、出たな。石川祐希」
「げってことないじゃん。失礼な」
休憩中、石川祐希が私の隣に自然と座る。
「眉が下がってるよ」
「はあ?」
「いつもの気迫が無い。どーかした?」
「別にそんな事無いし」
「悩みごと?珍しい」
「なんも言ってないじゃん、話聞け」
「聞かなくても分かるし。で、なに」
「なんでお前に話さなきゃ………て言いたいとこだけど。はあ、今回は仕方ない」
そういう変な優しさは、結構心に染みるもんなんですよ。
「自分が自分じゃなくなるってどう思う?」
「なにそれ」
「自分の知らない気持ちがあるってなんか怖くない?」
「自分の知らない気持ち……」
「そ、私はそれが分からないから、悩んでんの。そして、それをどうしてその人に抱いたのか」
「その人ねぇ」
「………ただの、憧れじゃ駄目なのかなあ」
一生懸命にボールを追いかける、あの人に目を向ける。
「はあ……」
ため息が零れた。
横から、頭を優しく撫でられる。
なに、と向くとニコニコとしながら石川祐希はただただ私の頭を撫でる。大きくて温かいその手。
なんで。
そんな、優しそうな顔するのさ。
「まだ、知らなくても良いんじゃない?」
「なんで」
「その人の気持ちが、なにか大切な気持ちだって事が分かってるなら、きっとそれで良いんだよ」
「………ふーん」
「大事にしなよ、その気持ち」
「うん」
撫でる手が止まる。
「なんか、以外」
「なにが?」
「アンタがモテる理由が分かった気がする。優しいね、石川祐希」
「そう思うならフルネームやめてよ(笑)」
「……そうだね、石川」
「やだ、祐希がいい」
「あっそ。じゃあ祐希」
祐希はニコリと笑った。
嫌い、から嫌いだった、にしてあげる。
さり気なくタメ口だけど、それも許してあげる。
今回に免じて、ね。
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夏(プロフ) - 高橋優さん» ありがとうございます!最近は更新が停滞してしまって……>< (2017年1月29日 16時) (レス) id: 158d7772d4 (このIDを非表示/違反報告)
高橋優(プロフ) - 楽しみにしてます!頑張ってください!! (2017年1月13日 22時) (レス) id: b132b1eb85 (このIDを非表示/違反報告)
夏(プロフ) - CMYさん» ほんとにほんとに更新出来てなくてすみません!!!!!!受験勉強で時間取れなくて………。ほんっとうに申し訳ないです!応援いつもありがとうございます!!すごく有りがたいです。期待に添えずほんとうに申し訳ないです。なんとか頑張っていきます!! (2017年1月10日 22時) (レス) id: 158d7772d4 (このIDを非表示/違反報告)
CMY - 復活されてこちらもとっても嬉しい限りです!夏さんのペースで構わないので、これからも更新待ってます!頑張って下さいね!応援しています!!! (2016年8月24日 12時) (レス) id: 12f3ffde3b (このIDを非表示/違反報告)
夏(プロフ) - CMYさん» 返信遅くてすみませーーんん!!!(泣)実は、テストの点があまり良くなくて、携帯使えなかったんです………。更新また再開していくのでよろしくお願いしますね!!ずっと待っててくださってありがとうございました!!!(泣) (2016年8月23日 16時) (レス) id: 158d7772d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏
作成日時:2016年7月1日 21時