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10-HS ページ10

「あの子ね、私の旦那の遠い親戚なの。本当に、他人に近いくらいの」


ある日、ヌナの旦那さんは、児童相談所からの要請を受けて、1人の女の子を自分が勤務する大学病院へと受け入れた。

その時、彼は唖然とした。

左手を見事に貫通したナイフ。

青くなった右頬。

骨が見えそうなほど痩せ細った首元。

所々覗く肌は赤く、または青く腫れ上がっている。

胸から流れ出る鮮血は、まるで彼女のタイムリミットを刻々と示しているようだった。

これはまずい、と彼は瞬時に判断し、彼女を懸命に治療した。

なんとか一命を取り留めるも、体力が限界だったのであろう、なかなか目を覚さなかった。

彼女の父親は、逮捕された。

しかし、その男は、本当の父親ではなかった。

彼とその男は、所謂、親戚に当たる関係ということに、彼自身が早い段階で気がついた。

心配して病室に来た、児童養護施設の者に話を聞けば、


「"この子は、親戚の家をたらい回しにされていて、ここ(施設)を出たり入ったりしているの"って、泣きながら言ってたみたい..」


その言葉を聞いて、彼は決心した。

自分が、この子を引き取ろうと。

この子がずっと欲しかったものを、たくさんあげようと。


「でも、どうやらあの子は、物心ついたころから、あんな感じみたいで..懐いてもらうのに苦労したの..それに、...」


ピタリと言葉を止めたヌナ。


NJ「ヌナ?」

「..いや、やっぱり何でもない..」


何かを考えるような素振りをして、すぐに僕たちの方へ視線を戻す。


「私だって、本当は反対したの。芸能界だなんて、絶対にやめなさいって」


あの子の生い立ちを考えれば、煌びやかな世界には関わらせ無い方が良いだろう。


「でも、パン社長は違った」


あの子の才能を、このまま埋めておくのは勿体ない。

宝石の原石を、放ったらかしにしておくことなど、自分には出来ない。


「4年近く、あの子の親代わりとして側にいたけど、パン社長にそこまで根気よく説得されたら、頷くしかなかった」


どうしてこのグループに追加メンバーとして入れようと思ったのかは、パンプロデューサーにしか分からないけれど、


「私は、あなたたちが、みんな優しくて良い子だって知ってるから、承諾した」


だから、泣かせたら許さないから。

いつも目力が強いヌナの瞳は、今は一段と強烈だった。

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作者名:エヌ | 作成日時:2020年12月31日 16時

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