あの空に咲く花束をあなたに -２- (ページ4)

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54 無味無臭ページ4

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まずいな、緊張でコーヒーの味が全く楽しめない。

僕はAさんとの待ち合わせ場所になっている、いつものカフェのいつもの席にに一人で腰掛けている。相変わらず古いレコードが小洒落たジャズを店内に流していて、マスターがそれにリズムを合わせるようにしてカップを磨いている。

ここのコーヒーは店の雰囲気と相まっていつもとても美味しいのに、Aさんとついに出かける日が来たことで頭が一杯で、まるで味がしない。

Aさんと出かける約束をしてから今日にいたるまで、僕はまるで雲の上を歩いているかのような気分だった。Aさんと出かける楽しみが心の隅にいつでもあることで、詰まり放題だった仕事のスケジュールも玉ねぎを刻むみたいに淡々とこなせた。

なのに、ここに来て緊張がずっしりと体にのしかかってきた。

無理もない。何年間も想って来た女性と奇跡的に再会して、はたまた奇跡的にデートをするのだ。緊張しないほうがおかしいじゃないか。

無言でテーブルの上で湯気を上げている味のしないコーヒーを見つめながら、自分を励ました。すると、かすかにコーヒーの匂いが鼻に届くようになってきた。

しばらくすると、カランコロンと今や聞き慣れたカウベルの音が店内に響く。

物音をなるべく立てないように、観葉植物からそっと顔を出す。

「ギョンスさん～！」

Aさんがカフェに入ってきた。視界に彼女の姿を捉えると、店内の照明が一段階明るくなった気がした。

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