ねえ、好きだよ ページ40
しゃがみ込んで、あせあせと床に散らばったコン◯ームを拾い集める祐希くんの横に、ちょこんと腰を下ろした。
私はしゃがむことが出来ないから、ぺったりとお尻を付いて、バラバラに散らばったそれを一枚手に取った。
「ちょ、手伝わなくてもいいよ。俺、やるからさ」
「…そうじゃ、なくて、さ」
あのね、あの、とその先の言葉が出かかっては、戻って。
不思議そうに覗き込む祐希くんの顔がうまく見れない。
指で摘んだ小さな四角いビニール袋の包みを所在無くいじくって。
喉につかえた言葉は、小さな勇気を無理やり振り絞ってどうにか形になった。
「…これ……使っても、いいよ」
尻すぼみに小さくなった声に過剰なほど反応した祐希くんが、ガクンと小さく尻餅をついた。
「え、は?えっと…意味わかってる?」
「…わかっ、てる、よ。だから…祐希くんとならって…」
ぽかん、とした表情のまま、みるみるうちにカッと彼の頰が赤くなった。
なのに何も言ってくれないから、もう自分で自分がいたたまれなくなって。
「ご、ごめん!やっぱ、今の無しで」
立ち上がろうと身を捩ったところ、パシっと掴まれた手首が熱い。
今さら無しは、無理だよ、と上気して○んだ瞳で熱っぽく見つめられると、身体の真ん中からズクンと震えた。
逃げるように俯いた視線は冷えたつま先を見つめて。
かさり、とビニールの包装紙を祐希くんの膝が踏んだ音、祐希くんの息使いをさっきより近くに感じて、A、と呼ばれる甘い声に思わず視線を上げた。
そしたらもう、あっという間。
逃げ腰だった私の身体を引き寄せて、抱き上げて。
お姫様だっこだ…、と思った瞬間、祐希くんの身体が少しぐらついた。
「わ!…ご、ごめん、重いよね」
「ん、違う。全然平気。俺、細いけど男の子だから」
そう言うとあまり広くない部屋をそのまま数歩横切って、壊れ物を扱うように優しい仕草でふわりとベッドに降ろされた。
すぐに覆い被さってきた祐希くんがあんまりに真っ直ぐに見つめてきて。
ああ、でも、この人は最初からずっと私を真っ直ぐに見つめていてくれた。
今まで感じたことのない種類の愛おしさがこみ上げてきて、彼の茶色味を帯びた髪に、柔らかい頰に指を滑らせた。
「…A、煽るの、ほんとヤメテ」
「あ、煽ってなんか…」
「すげー緊張してんの、俺」
と、私の手を取ってまだ薄い胸板に当てた。
手のひらに感じる鼓動さえも愛おしくて、祐希くん好きだよ、と紡いだ唇が祐希くんのそれに塞がれた。
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ユイ(プロフ) - 初めまして、読んでいくうちに続きが読みたくなりました。新しいHPを教えてください。 (10月19日 21時) (レス) id: 30678c49ef (このIDを非表示/違反報告)
Yuri(プロフ) - はじめまして。以前から読ませてもらって、また最初から読み直しました。新しいホームページは消してしまったのでしょうか?? (2018年6月30日 20時) (レス) id: 258a85c425 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 初めてコメントします。この作品ずっと読んでます。宜しければ新しいHPを教えてください( ; ; ) (2017年6月20日 9時) (レス) id: 43856cab70 (このIDを非表示/違反報告)
yukim8216(プロフ) - こんにちは。新しいHP教えて頂けますでしょうか?『ナノ』でそこからトップページからログインしてからどうすれば見れるのか分からなくて。前はそのHPで見てのてすが。ごんなさい、教えて頂けますでしょうか (2017年5月6日 7時) (レス) id: 343ef2b4f0 (このIDを非表示/違反報告)
RON(プロフ) - nattuさん» ありがとうございます。新しいHPで加筆修正したお話をアップしています。ぜひお越しください^_^ (2017年3月10日 14時) (レス) id: bdef7d3ec7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RON | 作成日時:2016年7月27日 22時