HAPPY BIRTHDAY 2 ページ37
真っ暗じゃん、と祐希くんの声がした。
寮の自室に彼がいる。
バタンと扉を閉める音にびくりとして、慌てて電気を点けた。
明るくなった部屋、怪訝そうに眉をひそめていた祐希くんは私と目が合った途端に、あれ?なんで?と言いながらも、表情を緩めてふにゃりと笑った。
「ここ私の部屋なの」
「へ?なんで?」
「誕生日、お祝いしたくて…。ふたりにお願いしたんだ」
誕生日おめでとう、と言うと微妙な距離で向かい合っていたはずなのに、一瞬で彼の腕の中にすっぽりと収まった。
ぎゅうっと強く抱きしめられると髪の毛に彼の頰の感触。
「どうしよ、すげー嬉しい」
嬉しさをじっくり嚙み砕きながら言ったような声色に胸がきゅんと鳴った。
こんなに大きい人なのに、なんて可愛いんだろうって。
彼の頰に自分の頰を寄せて、柔らかな肌を合わせる。
腰に回された腕に力が込められて、またグッとふたりくっ付いた。
溶けてしまいそうな思考回路が、ハッと、忘れかけていた"プレゼント"というキーワードを辛うじて思い起こさせる。
祐希くん!と彼の名を呼んで、混じり合いそうなほどに密着していた身体を少しだけ離した。
「あの、プレゼントなんだけど…私、バイトもしてないし親からの仕送りでプレゼント買うのもどうなんだろうと思って…」
「いらないよ、プレゼントなんて」
「大したものは用意できなかったんだけど…」
抱きしめられていた腕から抜けて、自炊スペースで作って部屋に運んできたオムライスとスープを並べた小さなテーブルを指した。
「ご飯、まだかなと思って…」
「すっげ美味そう!」
「いや、普通だよ、本当に普通」
料理に自信がある方ではない、ただ必要なら簡単に自炊する程度だから、ご馳走なんて作れなくて。
だけど、こんな料理でも嬉しそうに目を輝かせて、ハート描いて、とケチャップを差し出す祐希くんを見ていると、こちらまで嬉しくなってしまう。
ご希望通りにケチャップでハートを描くと、彼は小さな声で、あー、幸せ、と呟いた。
「こんな、プレゼントでも?」
「すげー嬉しいよ。俺のために作ってくれたんだしさ。それに、今日はもうおめでとうって言ってもらえないまま終わるんだって思ってたから、余計に」
「サプライズ、成功?」
「ん、大成功だね」
ね、もう食べていい?とこちらを見る彼に、うん、と頷くと、しっかり両手を合わせて、いただきます、と言ってからスプーンを動かし始めた。
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ユイ(プロフ) - 初めまして、読んでいくうちに続きが読みたくなりました。新しいHPを教えてください。 (10月19日 21時) (レス) id: 30678c49ef (このIDを非表示/違反報告)
Yuri(プロフ) - はじめまして。以前から読ませてもらって、また最初から読み直しました。新しいホームページは消してしまったのでしょうか?? (2018年6月30日 20時) (レス) id: 258a85c425 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 初めてコメントします。この作品ずっと読んでます。宜しければ新しいHPを教えてください( ; ; ) (2017年6月20日 9時) (レス) id: 43856cab70 (このIDを非表示/違反報告)
yukim8216(プロフ) - こんにちは。新しいHP教えて頂けますでしょうか?『ナノ』でそこからトップページからログインしてからどうすれば見れるのか分からなくて。前はそのHPで見てのてすが。ごんなさい、教えて頂けますでしょうか (2017年5月6日 7時) (レス) id: 343ef2b4f0 (このIDを非表示/違反報告)
RON(プロフ) - nattuさん» ありがとうございます。新しいHPで加筆修正したお話をアップしています。ぜひお越しください^_^ (2017年3月10日 14時) (レス) id: bdef7d3ec7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RON | 作成日時:2016年7月27日 22時