協力者は笑う ページ35
放課後、ひとり校内のコンビニへ向かう並木道で、トントン、と肩を叩かれた。
振り向けば、同じくらいの目線にある大きな瞳。
石川くん、ではもちろんなくて、私たちの内緒の恋の協力者を自称する星城バレー部1のイケメンだ。
「祐希だと思った?」
「…まさか、思ってないよ。部活は?」
「今日は少し遅くから始まるんだわ」
はい、これあげる、とおもむろに手渡されたイチゴの飴。
白と赤の包み紙に包まれたそれは、きっとどこかの女子からもらったものだろう。
知らない誰かに心の中で、ごめんなさい、と呟いて受け取り、どちらともなく寒空の下で閑散としているベンチに腰を下ろした。
「Aの背中が寂しそうだったからさー」
寂しくない、と言えば嘘になるけど、これが今のふたりの最上の選択で。
ありがとう、と言って包み紙を開いて、コロンとした赤い飴を口に放るとじわりと甘さが広がった。
「A、平気?つらくない?」
「…平気じゃない、よ。一緒にいれない時間が増えたのに、前よりもっと好きになってくんだもん」
そう言うと、なぜか彼が頰を真っ赤に染めて。
「なにそれ、すっげー可愛いこと言うね」
「ちょ、茶化さないでよ」
「それ今度、祐希に言ってみなよ。きっとその場で押し倒されるよ」
変なこと言わないで、と肩を叩くと彼は
整った顔をくしゃりとさせて子供みたいに笑った。
「きっとさ、すぐだよ」
「なにが?」
「祐希が有名になって、日本で一番のプレーヤーになってさ、Aに本気のプロポーズする日まで、あっという間だよ」
「プロポーズって…やっぱりあの時、談話室の外でずっと聞いてたんだね…」
「え?人聞き悪いなー。見張ってたんだよ、人が来ないようにさ」
「もう!あの時、本当に恥ずかしかったんだから!」
ごめんごめん、とさらり笑う。
そしてまた真面目な顔で、本当にすぐだよ、と。
「そしたら、あの頃、内緒の恋なんてしてたなあって、思い出してみんなで笑って話そうよ」
鼻の奥がツンとして、そうだね、と答えた声が涙声になった。
こっちを見ずに、ティッシュいる?と聞いてくる、こういうところもモテるんだろうな、なんて思いながらそれを受け取った。
「行くね。ここでAを慰めてあげれたらかっこいいんだけど、祐希に怒られるから」
「ん、ありがとう」
ふたりで精一杯作り上げた"内緒の恋"作戦に四苦八苦している今の自分たちを、そんな日もあったね、と笑える日。
冷えた風が首筋を撫でて冬の訪れを告げた。
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ユイ(プロフ) - 初めまして、読んでいくうちに続きが読みたくなりました。新しいHPを教えてください。 (10月19日 21時) (レス) id: 30678c49ef (このIDを非表示/違反報告)
Yuri(プロフ) - はじめまして。以前から読ませてもらって、また最初から読み直しました。新しいホームページは消してしまったのでしょうか?? (2018年6月30日 20時) (レス) id: 258a85c425 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 初めてコメントします。この作品ずっと読んでます。宜しければ新しいHPを教えてください( ; ; ) (2017年6月20日 9時) (レス) id: 43856cab70 (このIDを非表示/違反報告)
yukim8216(プロフ) - こんにちは。新しいHP教えて頂けますでしょうか?『ナノ』でそこからトップページからログインしてからどうすれば見れるのか分からなくて。前はそのHPで見てのてすが。ごんなさい、教えて頂けますでしょうか (2017年5月6日 7時) (レス) id: 343ef2b4f0 (このIDを非表示/違反報告)
RON(プロフ) - nattuさん» ありがとうございます。新しいHPで加筆修正したお話をアップしています。ぜひお越しください^_^ (2017年3月10日 14時) (レス) id: bdef7d3ec7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RON | 作成日時:2016年7月27日 22時