I am ugly… ページ27
「ごめん」
石川くんが倒れ込んでいるのに何にも出来なかった自分の無力さを思い出して涙が溢れた。
もう平気だから、泣かんでよ、と困ったように眉を下げてオロオロする石川くん。
ごめんね、と言ってもなかなか涙は止まらなくて。
人目のある玄関ロビーでめそめそする私の手を引いて、ギュっと抱きしめるとそっと杖を取ってそのまま抱えられる。
こっち、と連れてこられたのはベッドとテレビだけの簡素なふたり部屋の1室。
少し散らかった様子が何日も滞在している様子を表していた。
ベッドの上、向かい合うように座らされる。
すんすんと啜り上げる私の泣き声だけが静かな部屋に涙と一緒にポロリと溢れる。
「あの、本当に大丈夫だったからさ、俺。明日も試合出れるし…」
「…私、何もしてあげられなかった。支えてあげる事も、運んであげる事も…何も」
「そんなの…気にしなくていいのに…」
ふるふると首を横に振って、子供みたいに泣きながら下手くそな言葉を紡ぎ出す。
「それだけじゃ、なくて…。石川くんの背中が遠くて…。どんどん凄い選手になっていくの、わかってたはずなのに、置いていかれるみたいな気持ちになって。こんな自分が凄く嫌で…。私はきっと、石川くんには似合わない」
後悔、羨望、嫉妬、こんな醜い気持ちばかりの私は彼の目にどう映るんだろう。
怖いけど、一度言葉にしたものは取り返せなくて。
でも、逃げようにも杖は近くに無いから、俯いて、頰を滑った涙がポタリポタリと染みを作る。
嫌われる?呆れられる?
でも、石川くんの反応はそのどちらでもなくて。
ごめん、と言って、私を強く抱きしめた。
「そんな気持ちにさせてごめん、泣かせてごめん。気づいてあげられなくて、ごめん」
石川くんは、何も悪くないのに、泣きそうな声でそう言った。
違う、石川くんは悪くないよ、そう言いたいのに、大事な言葉は涙で形にならない。
「でも、俺、Aさんが思ってるよりずっと支えてもらってるよ。そんな気持ちも丸ごと全部好きだから、似合わない、なんて言わんでよ」
「でも、もっと、石川くんに合う人が…」
「いないよ。"もっと"なんて。1番も2番もない。もともと、俺の中にはAさんしかいないから。お願いだから、ずっと一緒にいてよ」
みっともない嫉妬も、劣等感も、丸ごと抱き締めてくれる彼の腕に抱かれて、嘘みたいに晴れていく。
堪えきれなくて、また泣いた。
今度は悲しい涙じゃない。
大きな手が優しく背中を撫でてくれた。
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ユイ(プロフ) - 初めまして、読んでいくうちに続きが読みたくなりました。新しいHPを教えてください。 (10月19日 21時) (レス) id: 30678c49ef (このIDを非表示/違反報告)
Yuri(プロフ) - はじめまして。以前から読ませてもらって、また最初から読み直しました。新しいホームページは消してしまったのでしょうか?? (2018年6月30日 20時) (レス) id: 258a85c425 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 初めてコメントします。この作品ずっと読んでます。宜しければ新しいHPを教えてください( ; ; ) (2017年6月20日 9時) (レス) id: 43856cab70 (このIDを非表示/違反報告)
yukim8216(プロフ) - こんにちは。新しいHP教えて頂けますでしょうか?『ナノ』でそこからトップページからログインしてからどうすれば見れるのか分からなくて。前はそのHPで見てのてすが。ごんなさい、教えて頂けますでしょうか (2017年5月6日 7時) (レス) id: 343ef2b4f0 (このIDを非表示/違反報告)
RON(プロフ) - nattuさん» ありがとうございます。新しいHPで加筆修正したお話をアップしています。ぜひお越しください^_^ (2017年3月10日 14時) (レス) id: bdef7d3ec7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RON | 作成日時:2016年7月27日 22時