伝えて絡めて繋がって ページ21
「私は石川くんのことが好きです」
好きって突然訪れるものだとばかり思っていた。
マサさんに出会った時のように、突然。
恋はいつも苦しくて切なくて。
だけど、こんな風に染み込むように好きになる恋もあるのだと、石川くんが教えてくれた。
「…私の足はやっぱり前みたいに動かなくて、杖無しじゃ今はこれが限界」
助けてもらうばかりで、何一つ返せないかもしれない。
すごい選手になっていくだろう彼を支える事なんて出来ないかもしれない。
だけど、石川くんの気持ちはいつも真っ直ぐに光る。
怪我をして卑屈になっていた私の心に暖かい光をさして。
「…もし、石川くんの気持ちが、好きだって言ってくれた時と変わらないのなら、私を石川くんの彼女にしてください」
石川くんは、何か答える前にぎゅーっと私を抱きしめた。
背の高い彼に抱かれて、つま先立ち、不安定な私の身体をぎゅっと。
「そんなの、変わる訳ない。ずっと、Aさんばっかりで…Aさんしか見えなくて…」
好きだよ、もうすごい好き、と言いながら、私の髪を耳にかけて、こめかみ辺りの傷を撫でる。
階段から落ちたあの日、石川くんからもらった髪飾りがつけた傷跡。
「ね、ここ…痛かった？」
「もう、どこも痛くないよ」
苦しそうな表情の石川くんは、きっと何度も"ごめん"を飲み込んだ。
怪我をした私に対して、謝る事しか出来ない自分を責めながら。
一筋流れた彼の涙をそっと親指で拭う。
「石川くん、好きだよ」
「好きだよ、俺も。…これからは、ちゃんと守るから。何があっても、俺がAさんの事を守るから」
そう言って、柔らかい唇を私のこめかみの傷跡に優しく押し付けた。
「もう終わっちゃうね、高校生活最後の文化祭も」
もうすぐで文化祭も終了時間。
私たちは結局あのまま空き教室に身をひそめるようにふたり並んで。
私なんかよりも遥かに大きな石川くんの手のひらに包まれるように手を握り合って、窓の外に見える飲食バザーのテントを上から見下ろしていた。
「俺ら、結局、文化祭なにも見てないね」
「そうだね」
「自分のクラスのたこ焼きも食べてないや」
「あ、私も…」
でも、まあいいや、と石川くんが笑った。
西日が当たる髪がいつもより茶色く輝いて、長い睫毛が白い頬に影を落としている。
「ずっと、欲しかったものが手に入ったんで、めちゃめちゃ幸せ」
照れながらそう言って、また私を腕の中に閉じ込める。
好きだよ、と甘い想いを抱きながら。
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ユイ(プロフ) - 初めまして、読んでいくうちに続きが読みたくなりました。新しいHPを教えてください。 (10月19日 21時) (
レス) id: 30678c49ef (このIDを非表示/違反報告)
Yuri(プロフ) - はじめまして。以前から読ませてもらって、また最初から読み直しました。新しいホームページは消してしまったのでしょうか？？ (2018年6月30日 20時) (レス) id: 258a85c425 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 初めてコメントします。この作品ずっと読んでます。宜しければ新しいHPを教えてください（ ; ; ） (2017年6月20日 9時) (レス) id: 43856cab70 (このIDを非表示/違反報告)
yukim8216(プロフ) - こんにちは。新しいHP教えて頂けますでしょうか？『ナノ』でそこからトップページからログインしてからどうすれば見れるのか分からなくて。前はそのHPで見てのてすが。ごんなさい、教えて頂けますでしょうか (2017年5月6日 7時) (レス) id: 343ef2b4f0 (このIDを非表示/違反報告)
RON(プロフ) - nattuさん» ありがとうございます。新しいＨＰで加筆修正したお話をアップしています。ぜひお越しください^_^ (2017年3月10日 14時) (レス) id: bdef7d3ec7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：RON | 作成日時：2016年7月27日 22時
