あなたは何にも悪くない ページ20
「いやー、売れた売れた！」
委員長が嬉しそうに私と石川くんの肩を叩いた。
見事、完売！と空になった材料のタッパーを掲げて。
「ふたりさ、休憩行ってきていいよ」
「でも、店しまうなら片付け…」
「休み無しでずっと仕事してもらってたし、片付けはいいよ。終了時間まで１時間くらいしかないけど、休憩行ってきて」
なんだか申し訳ないと思いつつも、私ではテントの片付けはうまく手伝えないだろうし、ありがとう、と言って立ち上がった。
ふと、隣を見れば看板を下ろして、うーんと伸びをしている石川くんは、祐希、お疲れー、すぐに数人のクラスメイトに囲まれた。
きっと友達とかと終了時間まで過ごすだろうな、と思って、ひとりテントを出て行った。
どこかにいるだろうバスケ部の友人とでも合流しよう。
目的もなく歩き出した背中に、Aさん、と臆病に震える声が刺さる。
「ミキさん…」
ちょうど人気のない展示ブースの並ぶ教室棟の廊下。
泣きそうに揺れる瞳に、思わず身構えてしまう私が映る。
あの、私、と小刻みに震える唇、固く握った拳は白くて。
「私、Aさんに…ずっと、謝りたく…」
「何してんの？」
彼女の言葉を遮るように、凛と澄んだ声が私と彼女の間を切り裂いた。
石川くん？と振り返る前に後ろに引かれて、硬い胸にぶつかる。
「あんたが謝ったって軽くなるのはあんたの罪悪感だけで、Aさんの足は治らない。俺は絶対許さないから」
あんたも自分も、と壊れそうなほど繊細な響きで石川くんが言うと、目の前のミキさんはびくりと震えて、バタバタと走り去った。
後ろから私の肩に石川くんが顔を埋めて、声を押し殺すようにぐっと息を飲んで。
じわりと熱い石川くんの涙が私のクラスＴを濡らす。
何も言わずにただ声を殺して泣く石川くんの柔らかな茶色い髪がふわふわと頬を擽る。
そっとその頬を撫でて、ちょっと来て、と近くの空き教室に入った。
「そこに立ってて」
と、がらんと空っぽの空き教室の黒板の前に石川くんを立たせて、自分は教室の後ろまで進んで、杖を離した。
彼の方に振り向いて、一歩二歩踏み出した。
あと少し、あと数歩。
あと一歩といったところでガクンと力を失った膝が落ちて、転びそうになった身体を慌てて石川くんが支えてくれた。
心配そうなその瞳をしっかりと見つめて。
「私は石川くんのことが好きです」
さっきまでじわりと涙を浮かべていた瞳が驚いたように大きく見開かれた。
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ユイ(プロフ) - 初めまして、読んでいくうちに続きが読みたくなりました。新しいHPを教えてください。 (10月19日 21時) (
レス) id: 30678c49ef (このIDを非表示/違反報告)
Yuri(プロフ) - はじめまして。以前から読ませてもらって、また最初から読み直しました。新しいホームページは消してしまったのでしょうか？？ (2018年6月30日 20時) (レス) id: 258a85c425 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 初めてコメントします。この作品ずっと読んでます。宜しければ新しいHPを教えてください（ ; ; ） (2017年6月20日 9時) (レス) id: 43856cab70 (このIDを非表示/違反報告)
yukim8216(プロフ) - こんにちは。新しいHP教えて頂けますでしょうか？『ナノ』でそこからトップページからログインしてからどうすれば見れるのか分からなくて。前はそのHPで見てのてすが。ごんなさい、教えて頂けますでしょうか (2017年5月6日 7時) (レス) id: 343ef2b4f0 (このIDを非表示/違反報告)
RON(プロフ) - nattuさん» ありがとうございます。新しいＨＰで加筆修正したお話をアップしています。ぜひお越しください^_^ (2017年3月10日 14時) (レス) id: bdef7d3ec7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：RON | 作成日時：2016年7月27日 22時
