白光に烟る ページ17
小さな窓から見えるグラウンドは広くてなんだか遠い。
でも、遠い場所にしてしまったのは、他でもない自分だ。
見学なんて、応援席でも本部テントでもどこだって良いと先生に言われたのに、私は保健室にします、と答えた。
もう走れない自分にとってあの場所は目を覆ってしまうほどに眩しいんじゃないかって思ったから。
だけど、保健室から見る体育祭はあの輪の中に入ってしまうよりも眩しく私を照らして、虚しさはより大きくなっただけだった。
タタタタっと走る足音が、保健室のドアの前でぴたりと消えた。
少しして、ガラリと扉が開いた。
Aさん、と最近特に聞き慣れてきた少し高めの声に振り返る。
石川くん。
さっきまでグラウンドで部活対抗リレーに出てたのに。
ユニフォームのまま、他に見向きもしないでここまで走ってきてくれた。
その優しさが何より嬉しくて。
保健室の窓から見える景色がぐっと広がって、暗かった部屋が明るくなった気がした。
保健室の長椅子にふたり並んで、窓外の体育祭を眺める。
ほんの少しだけ触れる肩。
向こうとこちらでまるで違う世界みたい。
ちらちらと石川くんを気にする視線を向ける女子達が通り過ぎる。
行かなくていいの？、なんて良い人ぶって聞くと、なにが？、とキョトン顔。
「俺、今日ずっとここにいるし」
なんて、しれっとまた嬉しい言葉を言ってくれる。
この人は太陽みたい。
そこにいるだけで人を惹きつける。
私にいつも温かい気持ちをくれる。
少し開けた窓から入る風に色素の薄い茶色味かかった石川くんの髪が揺れる。
長い睫毛をたたえた優しい瞳がこちらを向いて、目が合うと石川くんは、何？とふにゃりと笑った。
「なんでも、ない」
慌てて窓に目を移した私の横顔に、今度は石川くんの視線が刺さる。
何？と聞くと、なんでもない、って子供みたいに笑って。
恥ずかしくて俯いた私の肩をつんつんと石川くんが突く。
視線を落としたままリノリウムの白い床を見つめていると、自分のつま先の先にカサリと動くそれ。
「や、虫、虫！」
「え、ちょっ、」
縋るように石川くんの黄色いユニフォームにしがみついた。
カランと軽い音を立て、杖が床に転がった。
「虫やだ、取って、石川くん！」
「無理無理無理！虫は俺もムリ！」
とりあえず虫から逃げよ、と石川くんが胸に縋りつく私をぎゅっと抱きしめて。
ハッとして顔を上げると至近距離で目が合った。
慌てて逃げようとした身体をもっと強く抱きしめられて…。
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ユイ(プロフ) - 初めまして、読んでいくうちに続きが読みたくなりました。新しいHPを教えてください。 (10月19日 21時) (
レス) id: 30678c49ef (このIDを非表示/違反報告)
Yuri(プロフ) - はじめまして。以前から読ませてもらって、また最初から読み直しました。新しいホームページは消してしまったのでしょうか？？ (2018年6月30日 20時) (レス) id: 258a85c425 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 初めてコメントします。この作品ずっと読んでます。宜しければ新しいHPを教えてください（ ; ; ） (2017年6月20日 9時) (レス) id: 43856cab70 (このIDを非表示/違反報告)
yukim8216(プロフ) - こんにちは。新しいHP教えて頂けますでしょうか？『ナノ』でそこからトップページからログインしてからどうすれば見れるのか分からなくて。前はそのHPで見てのてすが。ごんなさい、教えて頂けますでしょうか (2017年5月6日 7時) (レス) id: 343ef2b4f0 (このIDを非表示/違反報告)
RON(プロフ) - nattuさん» ありがとうございます。新しいＨＰで加筆修正したお話をアップしています。ぜひお越しください^_^ (2017年3月10日 14時) (レス) id: bdef7d3ec7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：RON | 作成日時：2016年7月27日 22時
