キミのヒーローになりたくて ページ13
あ、傘忘れちゃった。
降りしきる雨を見つめながら玄関でひとり立ちすくむ。
学園祭準備で張り切ってあれもこれもと引き受けていたら、ずいぶん遅い時間になってしまった。
もう校内には帰宅部の生徒はほとんど残っていない。
同じ寮に帰るメンバーはみんなまだ部活中だし。
ふと、石川くんのふにゃりとした笑顔が浮かんだけど、こんなことで彼を頼りにするのは申し訳ない気がして。
どれだけ見つめていても雨足が弱まる気配はなくて、意を決して秋雨の中に飛び出した。
雨は容赦なく髪を濡らし、肩を濡らして。
急ぐこともままならない右足に少しイライラしながら、ぬかるんだ地面に強く杖をついた。
あ、と思った時には遅くて、ずるりと滑った杖に体重を乗せていた身体が引っ張られるように転んだ。
みっともなくて、恥ずかしいのに、直ぐに立ち上がることもできない足が嫌でたまらない。
所々、泥の付いた制服も悲しいくらいに惨めに思えた。
「Aさん？」
声の主を確認するよりも早く、腰の辺りを抱き寄せられると私の身体はいとも簡単に立ち上がった。
「なんで、ここにいるの？」
んー、なんとなく？、と笑うその顔を見ると、トゲトゲしていた心がじんわりと丸くなった気がした。
「どうしたの？」
「転んじゃって…」
「大丈夫？寮まで送るよ」
石川くんとひとつの傘に身を寄せた。
雨がビニール傘を小刻み叩く。
寮なんてもう目と鼻の先で。
石川くんが来るまで途轍もなく遠く思えていたのに、不思議。
寮の玄関につくまでほとんど話すことなく、いつもと違ってムスッとした表情の彼に、なんか、怒ってる？、と聞いた。
「…俺、前に言ったよね？困った時、いちばん最初に俺を思い出してって」
さっき、すげー困ってたじゃん、と眉根を寄せて怒るような口調で。
「ごめん、迷惑かけたくなくて…」
「いいよ。かけてよ、迷惑でもなんでも。Aさんの感情だったら、どんなものでも全部欲しい」
真剣な表情でそう言われると、立っていられないほどに恥ずかしくなって、ありがとう、とだけやっとのこと伝えて、玄関のドアに手をかける。
だけど、泥だらけの身体をぐんと引かれて、後ろから全身を包むように抱き締められた。
「…でも、良かった。…Aさんを助ける役目、誰かに取られなくて、良かった」
ギリギリ触れないくらいの近さで耳元に寄せられた唇。
ごめん、また明日、と言う言葉と同時に温もりが離れて。
振り向けないまま、足音は遠くなっていった。
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ユイ(プロフ) - 初めまして、読んでいくうちに続きが読みたくなりました。新しいHPを教えてください。 (10月19日 21時) (
レス) id: 30678c49ef (このIDを非表示/違反報告)
Yuri(プロフ) - はじめまして。以前から読ませてもらって、また最初から読み直しました。新しいホームページは消してしまったのでしょうか？？ (2018年6月30日 20時) (レス) id: 258a85c425 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 初めてコメントします。この作品ずっと読んでます。宜しければ新しいHPを教えてください（ ; ; ） (2017年6月20日 9時) (レス) id: 43856cab70 (このIDを非表示/違反報告)
yukim8216(プロフ) - こんにちは。新しいHP教えて頂けますでしょうか？『ナノ』でそこからトップページからログインしてからどうすれば見れるのか分からなくて。前はそのHPで見てのてすが。ごんなさい、教えて頂けますでしょうか (2017年5月6日 7時) (レス) id: 343ef2b4f0 (このIDを非表示/違反報告)
RON(プロフ) - nattuさん» ありがとうございます。新しいＨＰで加筆修正したお話をアップしています。ぜひお越しください^_^ (2017年3月10日 14時) (レス) id: bdef7d3ec7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：RON | 作成日時：2016年7月27日 22時
