与う人よ ページ11
卒部式が長引いたせいで、いつもより少し遅い帰り道。
明日からはずっともっと速い時間にこの道を歩くのだと思うと、暗い夜道も嫌じゃなくて、なんだかゆっくり歩いた寮までの道。
センチメンタルな気持ちを抱えていたせいか、寮の玄関に置かれたベンチに座る石川くんに気付いたのは、本当に目の前に来てからだった。
「Aさん」
「わ、びっくりした…どうしたの？」
「いや、ちょっと、バレー部の奴らに用事があって、さ」
「そうなんだ、呼んでこようか？」
玄関に入りかけた私を、石川くんが慌てて制した。
ドアを開けようとした左手に彼の左手が重なった。
ごめん、嘘、と小さな声がすごく近くで聞こえる。
まるで後ろから抱き締められているように感じるほどの距離で。
「本当は、ただAさんの顔、見たかっただけ……です」
「…それ、は、光栄です…」
なんとなく、そのまま玄関のドアは閉めて、ベンチにふたり並んで夏の夜空を見上げていた。
昨日まで国体予選だったという石川くん。
「優勝したんだけど、さ、なんかちょっと調子悪くて」
「そっか、疲れもあるかもね。大会いっぱいあったもんね」
お疲れ様、と言うと、石川くんは少し笑って、女バスは？最近どう？、って。
「女バスは……３年生、今日引退でした」
「え、そうなの？」
「うん。寂しいけど、２年生強いし、３年生全員で決めたことだしね」
「でも、Aさん、もったいないね」
「いやいや、私なんてもうプレーできなかったし」
「でも、マネージャー業務のお手伝い、頑張ってたじゃん。だから、もったいないなって」
けろっとした顔で、私が一番欲しかった言葉を当たり前のようにくれるから、引っ込んだ涙がまた溢れてきて。
「え？マジ？な、泣いてる？大丈夫？」
今だけじゃない。
今までずっと、私を救うのは彼の言葉や行動で。
「…全然、大丈夫じゃない、よ。…石川くんのせいだよ」
そう言うと、石川くんは目に見えて狼狽して、練習後に着替えて、汚れてないから、と抱き込むように私の顔をＴシャツの胸に押し付けた。
ほんと、もう泣かんでよ、と困った顔の石川くんのＴシャツから香る制汗剤の匂いが夏の夜風に混じって溶けて。
すすり泣く私の声は、石川くんのＴシャツに染み込むように消えていった。
落ち着いた頃、ありがとう、と顔を上げると、照れた彼の顔越しに流れ星ひとつ流れて。
願い事を唱える間もなく消えていった。
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ユイ(プロフ) - 初めまして、読んでいくうちに続きが読みたくなりました。新しいHPを教えてください。 (10月19日 21時) (
レス) id: 30678c49ef (このIDを非表示/違反報告)
Yuri(プロフ) - はじめまして。以前から読ませてもらって、また最初から読み直しました。新しいホームページは消してしまったのでしょうか？？ (2018年6月30日 20時) (レス) id: 258a85c425 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 初めてコメントします。この作品ずっと読んでます。宜しければ新しいHPを教えてください（ ; ; ） (2017年6月20日 9時) (レス) id: 43856cab70 (このIDを非表示/違反報告)
yukim8216(プロフ) - こんにちは。新しいHP教えて頂けますでしょうか？『ナノ』でそこからトップページからログインしてからどうすれば見れるのか分からなくて。前はそのHPで見てのてすが。ごんなさい、教えて頂けますでしょうか (2017年5月6日 7時) (レス) id: 343ef2b4f0 (このIDを非表示/違反報告)
RON(プロフ) - nattuさん» ありがとうございます。新しいＨＰで加筆修正したお話をアップしています。ぜひお越しください^_^ (2017年3月10日 14時) (レス) id: bdef7d3ec7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：RON | 作成日時：2016年7月27日 22時
