それはまだまだ先のおはなし ページ2
春休み中の事だった。
３年生になり、一人部屋となった寮の部屋に同じく寮生の子が数人駆け込んできた。
「ねえ、A、なんか玄関にめっちゃかっこいい人いるー！」
えー？本当に？なんて思って自室の窓から玄関の方に顔を出す。
見覚えのある姿。あれは…
「マサさん！？ど、どうしたの？」
「いや、たまたまこっちまで来たから、なんつーか、様子を見ようかと…」
「…とりあえず、今から下降りるね」
ゆっくりでいいよ、と私に言った声は低く優しくて、私の後ろで同級生達がきゃあ、と騒いだ。
階段に降りる途中で同じく寮生のバレー部ふたりと鉢合わせ。
「A、どっか行くの？」
「ん、下に知り合いが来てて…」
「そうなんだ、これから祐希も来るんだよね」
ギクリとした。
なにも まずいことなんて無いのに。
玄関を開けると春風に髪を揺らしてベンチに座っていたマサさんか振り返った。
久しぶり、でもないか、と言うと、当たり前のように側に来て、まず杖を持って、それから私をひょいと抱き上げる。
これくらいの段差くらい平気だよ、と言っても、またには甘えなさい、とお兄ちゃん顔で笑って。
その姿にまた同級生達が湧く。
「Aさん！」
「あ、石川くん」
降ろしてって言うのに、マサさんは面白そうに笑うだけで全然降ろしてくれなくて。
やっとのことで解放されると今度は石川くんにグンと手を引かれて、バランスを崩した肩をぐっと引き寄せられた。
拗ねたような横顔を見上げれば、どきん、と胸が鳴る。
「石川祐希くん、来年、慶應に来ない？けっこういいとこだと思うよ」
「行きません」
「もうどこか決めてるの？」
「決めてないです、けど、他の大学なら柳田さんと試合出来るじゃないですか」
虚を突かれて、きょとんと目を丸くしたマサさん。
すぐにふっと笑って、そっか、楽しみにしてる、と言った。
「絶対負けません」
うん、俺も、とマサさんがふわりと笑うと、また同級生の女子が小さく黄色い声をあげた。
「じゃあ、また」
「え、マサさん、何しに来たの？」
「遠征ついでのスカウトと可愛い妹の様子見」
それだけ言って帰っていく後ろ姿を見ても昔のように胸は痛まなかった。
「っはー、緊張したぁ」
「ちょ、石川くん？」
マサさんとは対照的な高めの声の持ち主はへなへなとしゃがみ込んだ。
もっとバレーがんばろ、と呟いた彼とマサさんが近い将来同じユニフォームで世界と戦うことになるなんて、この頃はまだ誰も予想していなかった。
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ユイ(プロフ) - 初めまして、読んでいくうちに続きが読みたくなりました。新しいHPを教えてください。 (10月19日 21時) (
レス) id: 30678c49ef (このIDを非表示/違反報告)
Yuri(プロフ) - はじめまして。以前から読ませてもらって、また最初から読み直しました。新しいホームページは消してしまったのでしょうか？？ (2018年6月30日 20時) (レス) id: 258a85c425 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 初めてコメントします。この作品ずっと読んでます。宜しければ新しいHPを教えてください（ ; ; ） (2017年6月20日 9時) (レス) id: 43856cab70 (このIDを非表示/違反報告)
yukim8216(プロフ) - こんにちは。新しいHP教えて頂けますでしょうか？『ナノ』でそこからトップページからログインしてからどうすれば見れるのか分からなくて。前はそのHPで見てのてすが。ごんなさい、教えて頂けますでしょうか (2017年5月6日 7時) (レス) id: 343ef2b4f0 (このIDを非表示/違反報告)
RON(プロフ) - nattuさん» ありがとうございます。新しいＨＰで加筆修正したお話をアップしています。ぜひお越しください^_^ (2017年3月10日 14時) (レス) id: bdef7d3ec7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：RON | 作成日時：2016年7月27日 22時
