蟲柱は蝶のように舞う 肆

佰参拾参ノ舞　決勝戦進出 ページ15

♪


　爆豪と胡蝶がぶつかり合う数瞬前。

(普通なら爆発を中心とした全方位に衝撃が広がりますが、爆豪さんの場合は恐らく掌の正面のみ…ならば！)

　胡蝶は迫る爆豪の左腕を鞘口(さやぐち)で殴るように逸らして爆発を無効化、そのまま右腕も同じように弾こうとする。しかし、すでに目前に迫っている腕を弾くことは出来ないと判断した胡蝶は、鞘と腕を交差させて防御の姿勢をとった。
　爆発の衝撃をもろに喰らった鞘は、粉々に砕け散って周囲に飛散。鞘だけでは消しきれなかった衝撃が胡蝶の腕を襲い、ミシミシと嫌な音を立てる。

(左腕はもうダメですね…)

　折れて紫に腫れ上がった前腕に一瞬だけ視線を向けた胡蝶は、勝利を確信して気を抜いた爆豪の項目掛けて全力の膝蹴りを喰らわした。
　これが、爆発の瞬間から煙幕が晴れるまでに起こった全てだ。

「ば…爆豪くん…行動不能…決勝戦進出は…胡蝶さん！！」

　ミッドナイトの声が静かなスタジアムに響く。そしてその声に遅れて数秒後、鼓膜を破かんばかりの歓声がスタジアム全体を多い尽くした。


　雄英コソコソ噂話

「ねぇねぇ！じろちゃん！
　これ見て！」

「ん？なに？」

「じゃーーん！
　しのぶちゃんのちょっとセクシーな写真！」

「！！？！？！？！」

「昨日一緒に帰ってたらさ、急に雨が降ってきちゃってね！しのぶちゃんの制服が透けてたからつい撮っちゃった！」

「ついじゃないでしょ！ついじゃ！」

「えー…じゃあ…じろちゃんは欲しくないのかぁ」

「な！……欲しくないとは…言ってない…」

「でしょでしょ！でもタダじゃあげれないな〜」

「…何が目的？」

「じろちゃんの秘蔵しのぶちゃんコレクションと交換！」

「…１枚につき１枚！」

「いいよ！」

　こうして胡蝶の知らぬところで、日夜怪しい取引が行われているのだった…

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