【d!】春雷の喝采を【演劇部企画前編】 (ページ8)

今日:9 hit、昨日:0 hit、合計:8,954 hit

あなたを追いかけてページ8

この学校の演劇部は圧倒的に人手が足りなかった。

いや、撤回する。人は沢山いるのだ、それはそれは溢れかえる程の女子が。

……それも、目の前にいる男、グルッペンによって。

『……グルッペン折角顔良いんだしキャストやったら？』

「何をするも俺の自由だろう？」

『それは…そうだけど…』

ドイツ人とのハーフと言ったか？ブロンドの髪は明らかに日本人離れをしており、見るものが見たらモデルかと信じ込んでしまうほどの顔の整い方だ。

そんな美しい彼はステージの真ん中で輝かしい照明に当たりながら演劇をするかと思いきや光の当たらない裏方ときた。そんなもの、宝の持ち腐れでしょう？

彼目当てで入った女子は五万といる。しかしほとんどの子達はグルッペンがステージに立つと思っているためキャスト志望。つまりはキャスト過多による裏方の人手不足である。

顔が良く生まれたら生まれたで大変なんだな、と彼が作り上げた台本に照明のタイミングや音響やらをメモしているとふいに視線を感じる。

『…なに』

「…いや、台詞や行動しか書いてないのに照明のタイミングが分かるのが不思議に思ってな」

『ありがとう…？』

「なんで疑問形やねん」

珍しい関西弁。彼が楽しんでいる時に無意識に出てしまうものだと言っていた。

そうか、彼は今、楽しんでいるのか。

彼は裏方が好きで堪らないんだな、と嬉しくなって小道具を買う予算を頭の中で考えた。

・