【d!】春雷の喝采を【演劇部企画前編】 (ページ3)

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『…とりあえず、みんなお疲れ様。頑張ってくれてありがとう。私たちにとっては最後の発表会だったけど、みんなと出来て良かった。…姿勢を正してください』

毎度お決まり、といった挨拶をしてうちの部だけの解散前の動きに入る。

息を吸うと同時に肩を後ろに回してピンと背筋を伸ばす。

『お疲れ様でした。』

｢お疲れ様でした！｣

『ありがとうございました。』

｢ありがとうございました！｣

『解散！』

｢失礼します！｣

一連の流れの後わらわらと皆が帰る中、口をキュッと結んだ彼の前に立つ。

『それで、えっと…。チーノくん、どうしたの？悩み事？』

｢ぁ、その…せん、ぱい｣

『ん？』

私よりも背が高いはずの彼が、上目遣いでこちらを伺うように見つめる。
その瞳は彼のトパーズみたいにキラキラとしていて、鮮やかなオレンジに私が映る。

意を決したのか、両手をギュッと握りしめて再度こちらに視線を向けるチーノくん。

｢せ、先輩…！｣

『なに？』

｢ぼ、僕。先輩のことが好きです｣

『…まっ、え？』

一瞬、何が起きたのか分からなかった。
彼が何故私の手を握っているのか。そして、彼の口から紡がれた言葉が何を意味しているのか。

一度に起きたことに脳の処理が追いつかない。

｢僕が、演劇部に入ろうと思ったきっかけ。分かりますか？｣

『…ううん』

｢あの日、新入生歓迎会で舞台に立ったあなたが忘れられなかった。だから、演劇部に入ったんです。｣

『そう、だったの』

知らなかった。

うちの演劇部、いや。もしかしたら他校の人たちもそうかもしれないが。所詮目立たない部活なのだ。ダンス部やバトン部のための余興、といったところだろう。

だから、私たちは校内公演で部員獲得なんて期待していなかった。それでも、演じることが大好きな私たちは来る日も来る日もその日のために練習を重ねる。

だから。まさか、本当に見てくれている人がいるとは思わなかった。

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